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第6章ー8 西の大国-8
「…それでリア、その赤い石の片割れがどこにあるかわかるのか?」
軽い休憩を終え、再びぶらぶらと歩き始めながらライナーが問う。
「…ん、とね。」
聞かれたリアはきょとん、とライナーを見上げたのち、ゆっくりとその大きな瞳を閉じた。
そして、
「…………………。…………………。…………あっち。」
「そうか。えらいぞ、リア。よく頑張ったな。」
随分と大雑把な感じではあったが、見事答えを導きだしたリアの頭をライナーが優しく撫でてやっていたその時。
………!
ライナーはこの初級エリアの入り口が開かれた気配を感じた。
『…シェラ。』
『ええ。“あの者” 達が入って来たようですね。しかしこちらの結界には気付いていないようですので、このまま放置しておいても問題ないでしょう。』
『……。』
「……?……ライナー…? なぁ、に?…ど、した…の?」
優しく撫でてくれているライナーの大きな手は、変わらずリアの頭にあるのに、雰囲気だけがどこか固く変化した事を敏感に感じたリアが不安そうに聞く。
「いや、なんでもない。リアが示した方向に難しい障害物が無いか視ていただけだ。心配するな、大丈夫だったぞ。今まで通りやればエスティと2人でクリアできるはずだ。2人とも頑張れるな?」
リアの不安を感じ取ったライナーはすぐに優しく微笑むと、何でもない風を装い、上手くリアの意識を宝探しへと誘導する。
もちろんすぐにリアには笑顔が戻り、ライナーの問いかけにもエスティと2人、良い子のお返事を返したのだった。
その後、シェラサードが “あの者” と言ったアルフリードを始めとしたOB一行はわりとすぐに初級エリアを出て行った。
フィランドとカルラがそれとなく次へと促した事もあるが、そもそもこの初級エリアには能力の高い生徒はいない為、ほとんど義務で立ち寄ったような物だった、というのが主な理由である。
ちなみにライナーとリアの事については出来る限り知られないようにと学園長から指示が出されており、その為の戦術は生徒会を中心とした執行委員達が必死で考えたもので、現時点ではその作戦が成功していると言えるだろう。
言うまでもない事ではあるが、学園長にその指示を出させたのはライナーとフィランド、学園におけるリアの守護双璧だという事も念の為に追記しておこう。
さて肝心の兄弟石については、初級エリアだけありエリア内の移動に苦労する事も無く、宝石に仕掛けられたトラップも安易な物で、割と簡単に入手する事が出来た。
エスティと2人で入手したばかりの兄弟石を二つ並べ嬉しそうに暫く眺めていたリアだが、ふと顔をあげると、思い付いた様にライナーを見上げる。
「……あの…ね、リア、…おかりな、……ふー、する。」
西の大国8 END
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