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第6章ー14 西の大国-14
しかし。
リアが炎の魔石にユグを与え、ペガサスが封印するまでのほんの僅かな時間。
アルフリードが覚醒者の学生と己の騎士とのやり取りを興味半分、呆れ半分で聞くともなしに聞き流していた時、それは起きた。
「……ッ…!!!」
何かが突き抜けて行ったような鋭い感覚に、アルフリードは思わず愛剣を掴んだ。
「アルフリード様!?」
瞬時に異変を察知したアルフリードの騎士、ラーゼル・カーターが素早く駆け寄り辺りを警戒する。
その只事ではない様子に、フィランド含め学園関係者達もすぐに体制を整え、周囲を見渡した次の瞬間。
……リィ…ン ……フィン…
「………これ…はっ………!」
その場にいた者の中で “その音”に最初に反応したのはフィランドだ。
次いで痛みを耐えるような表情でラーゼルに支えられ、何とか膝をつかずにいるアルフリードも気付く。
しかし気付いたのは二人だけのようで、残りの者たちは周りを警戒しながらも、そんな二人の様子を気にしている。
フィランドは “音”の発信源を必死に探っていたが、頭に直接響くような音に特定出来ないでいた。
Side:Alfreed<アルフリード>
ラーゼルと学生達とのやり取りを苦笑い交じりに見ていた時、急に何かが体を突き抜けたような鋭い痛みに襲われ、思わず膝をつきそうになったが、何とか堪え、愛剣に手をかけながら周囲を探る。
しかし特に悪い気配も異常も感じず、気配の探索範囲を広げようとしたその時、学生騎士が何かに気付き困惑したような声を上げた。
ほぼ同時に届いた不思議な音。
小さな鈴が転がるような、あるいはハープの弦をそっと揺らしたような、決して不快な音ではなかったが、しかしその音に比例するかのように体の痛みと脱力感が増し、意識すら保つのが困難になってゆく。
ラーゼルや側近達、そして学園の教師たちが慌てて何か言っているが、既に意識が朦朧として、聞き取ることも答えることも出来ない。
…なんなんだ、これは……
…それに………この音は……
しかしもうだめだと思ったギリギリの所で、突然体を突き刺す感覚から解放され、意識が一気に浮上する。
「…ツッ……」
「アルフリード様っ!」
「……そんなに騒ぐな、ラーゼル。……大丈夫だ。」
「…しかしっ!!」
納得いかない様子のラーゼルが食いついてくるが、今はこうなった原因の解明がしかった。
多分“音” に気付いたのは自分とフィランド・イプサムと名乗ったあの学生騎士だけのはずだ。
そしてあの青年は自分よりも確実に答えに近い場所にいるという確信がある。
ならば私は彼の者を問い詰め、真実を得るだけだ。
Side:Alfreed<アルフリード> END
西の大国14 END
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