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第6章ー15 西の大国-15
リアが両手に持った双子石にユグを与え魔石化し、ペガサスがその魔石を封印するまでは、時間にしてほんの5分程度だ。
しかしそのたった5分がリア達の今後を大きく変えることになった。
この間に起きたアルフリードの異変はもちろん偶然ではない。
まだ誰も気が付いていないが、これらは確かに連動した事象である。
更に付け加えるなら、魔石については間一髪、大ごとになる前に封印できたが、残念ながらこれらの事象に触発され、第三の異変が起ころうとしていたのである。
暫くの間、ペガサスが作った封印球を眺めていたリアであるが、ふと気づいたように斜め掛けしていたカバンを開けた。
「どうした、リア?」
腕の中でごそごそしはじめたリアにライナーが問う。
するとリアはライナーの腕をぺしぺしと軽く叩いて、下ろして欲しい合図。
可愛らしいリアの仕草にライナーは頬を緩めながら、その場にそっと下ろしてやると、リアはそこにぺたん、と座り込み、カバンの中身を大胆にばさーっ、と一気に出した。
コンパスに懐中電灯、エリアマップといった探検グッズをよけ、リアが手にしたのは例の “オカリナ”である。
それを保護者達に差し出すように見せると、爆弾発言をした。
「あの、……ね、この子……が、…ね、……うた、って…る、…の」
!!!!
一瞬息をのんだ保護者達であるが、
「…シェラッ?!」
「…いえ、私にも何も。おそらくその “歌”というのは、主にしか聞こえていないのだと思います。…主、ソレはいつから歌っているのですか?」
「ん、…と。……さっき?」
「リアが魔石にユグをあげた時か?それとも魔石を封印した後に歌いだしたのか?どっちだった?」
曖昧なリアの答えだが、慣れているライナーは核心を導くように優しく質問を重ねていく。
「シェラ、…が、ふう…いん、す…るまえ、ませき、…さん、と…いっしょ。……ふうい、ん……した、あ…と……は、ひとり、…で。」
「……魔石と一緒に…?」
リアが言っていることを疑う気は全くないが、信じたくない事実にライナーは頭を抱えたくなった。
『それはつまり…魔石とアレが共鳴した、って事か…?』
『…ええ。しかも“アレ”と共鳴したとなると、この魔石が“あちらの世界”もしくはファルシオン所縁の物という事になりますが……。』
『……!! シェラ、魔石の封印は完璧なんだろうな?』
『…出来る限りの封印をしました。…しかし仮に魔石がユーグの世界所縁の物だとしたら、…どのような封印を施したとしても、主との繋がりを断つことは不可能でしょう。』
保護者二人が深刻な心話をしている中、一方の子供たちは呑気なものである。
「にゃあ、リアー、どんなお歌にゃ?」
「…ん、と、……さらさら~、……って、かん…じ、なの。」
「さらさら~、にゃ?」
地面にぺたんこ座りのリアの膝に乗り、こてん、と首を傾げたエスティに、リアはこくり、と頷く。
「うん。……あと、…ふわふ、わ~、……ひら~っ、って、…なる、の。」
「「………。」」
言う方にとっても聞く方にとっても、非常にわかりにくい説明である。
リアは説明の途中で困ったように黙り込んで考え込み、エスティもリアからの情報を基に一生懸命想像しようとして考え込んでいる。
オカリナを吹けば分かりやすいのだろうが、神殿に帰るまでは吹いてはいけない事を二人ともちゃんとわかっているので、何とか説明しようとした結果である。
本人たちは至って真剣なのだが、隣で心話をしつつ見守っていた保護者達には微笑ましいやりとりとしか映らない。
かなり緊迫した状況であるはずなのだが、思わずほっこり癒されるライナーとシェラであった。
西の大国15 END
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