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第6章ー18 西の大陸-18

 …“アレ”、ね。 アルフリードの返答を聞くと、フィランドは軽く目を閉じ思考を巡らせる。 仮に己の感じる通り、聖剣が覚醒を促しているのだとしたら、その原因は9割、リアだろう。 オカリナでも吹いたのか?と考えたが、ペガサスとライナーが付いていて、このタイミングでそれをさせるとは思えないため、その考えは却下する。 きっかけが何であったにせよ、聖剣が覚醒を促すという事は、“その必要がある”からだ。 ……ではその必要性とは何か、という事が一番のポイントか…。 そこまで考えるとフィランドはふっと息を吐き、閉じていた目を開いた。 決めた。 これ以上は関わらない。 “アレ”が何か、という事が気にならないと言えば噓になるが、へんに関わって薮蛇になるのは御免だ。 ……問題は、どうやって関りを断つかだが…。 目を閉じていたのは時間にして1分ほど。 その間、目を閉じたフィランドをじっと観察いていたアルフリードは、目の前の若き騎士がふと肩の力を抜いて顔を上げた瞬間、その瞳を見て“ああ、これ以上は何も聞き出せそうにないな”と悟ってはいたが、取りあえずは彼の言葉を待った。 「…あなたが、心当たりを“アレ”と称された以上、俺はそれが何であるかはお聞きしません。」 「別に聞いてくれてもいいぞ?」 「…いえ。人には相応な立ち位置があり、己の分をわきまえ、それを超えてはならないと、従兄から学びましたので。」 「…なるほど、それで?」 「俺に言えるのは一つだけです。あなたの言う、“アレ”の事をまずはよく調べ、理解し、そして“アレ”と聖剣が望む通りの覚醒を完了させてください。」 常人からしたらとんでもない事をさらりと簡単に言い切ったフィランドに、隣に並ぶ二人は驚愕の表情だが、アルフリードはどこか面白そうにフィランドを眺めている。 一方、一気に言い切ったフィランドは、“これ以上は何もできない”、という事をはっきり伝えた今、アルフリードの出方を待っていた。 もちろんフィランドの意図を十分わかっているアルフリードである。 硬い表情の騎士に、苦笑いしながら言葉を返す。 「……そうか。わかった。確かにアレについてはまだ解らない事だらけだからな。  しっかり調べてみるとしよう。  …安心しろ。これ以上はそなたに何も聞く気はない。時間をとらせて……」 「「! ! !」」 やはりこれ以上の詮索は不可能と判断したアルフリードが、時間を取らせてすまなかったな、そう言おうとした瞬間、西からかつて感じた事のない凄まじい邪気を感じ、すぐさま立ち上がり剣を取った。 隣には同じく気配を感じた厳しい表情のラーゼルが並び立ち、見えるはずもないが、邪気が発生した方向を凝視している。 間をおかず、理事長室が激しくノックされ、すぐに数名の教員が入ってきた。 理事長のムーガ・ハプソンは教員にそれぞれ生徒の避難等の指示を行い、国賓であるアルフリードの安全も確保するため、教員の一人にアルフリードとラーゼルの誘導を指示し、二人にも避難場所の説明をしようとしたのだが。 「…いや、私たちの避難はいい。私も戦おう。」 「なっ!? とっ、とんでもないですぞ!」 ありえない申し出に、ムーガ・ハプソンは即否定する。 王子に万一の事があったら、国際問題である。 最悪の場合、大陸間戦争が勃発するかもしれない。 絶対にあってはならない事であった。 とんでもない事を言い出した君主に、騎士・ラーゼルも猛反対だ。 「まことに!とんでもない事を言わないでください!さあ、早く避難を!」 しかし、それに答えたアルフリードの言葉に思わず黙り込む。 「ラーゼル、これは覚醒のチャンスかもしれないのだ。…このようなタイミングで、この覚醒者と同じような状況が訪れたのは、もう偶然ではないと思わないか?」 西の大国 END

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