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第6章-19 魔物襲来-1

時は少し遡り、リアのユグにより二つの石が魔石となり、オカリナと “歌って”いた時。 今は亡き幻獣の王国、マルシエでは。 「「………ッ!!」」 拠点にしている廃ホテルから3km程の場所で、手に汗握るような激しい“手合わせ”をしていたクロスと黒曜、二人が急に力を無くしたように、がくん、と膝から崩れた。 「…黒曜!! クロス殿!?」 黒曜に召喚され共に手合わせしていた朱雀が、急に倒れこむように跪いた二人に驚きの声を上げる。 その切羽詰まったような声に、近くで薬草摘みをしていたメイテや双子たちも何事かと集まってきた。 キリエは見回りに行っており不在だ。 「エッ!?二人とも、どうしたの!?」 メイテは素早く駆け寄り、二人のチェックをする。 見たところ外傷などはなさそうだが、明らかに顔色が悪く、苦しそうだ。 「朱雀様、二人に何があったのですか?」 メイテは二人がこうなる原因を見ていたであろう、朱雀に問いかける。 『…それが、私にもわからないのです。手合わせをしていた最中、二人とも急に力が抜けたように、うずくまってしまったのです…。』 「急に力がぬけたように…?」 『ええ。』 そんな会話の途中、 「わっ!?」 「きゃっ!!」 クロスと黒曜に寄り添うように就いていた双子の、何かに驚いたような声。 今度は何事かと振り返ったメイテにも、その異常はすぐにわかった。 「メイテ姉!クロス兄のユグがっ!!!」 「わかっているわ!アナタ達は黒曜と自分たちに結界を!黒曜、できるなら、朱雀様にもご協力いただいてっ!」 メイテは、クロスに比べるとかなり安定して見える黒曜と双子達に指示を出しつつ、半ば意識を失いつつあるクロスに心話で呼びかける。 これはユグの暴走だ。 しかし成人したマルシエ人に、ユグの暴走など聞いた事が無い。 『クロスっ!!クロス!!聞こえていて?とにかくユグを抑えなさい!!このままでは大暴走してしまうわ!!』 クロスの肩を揺さぶりながら必死に呼びかけるメイテ。 同時にキリエにもココへ来るよう、呼びかける。 いよいよユグが視認できるほどに活性化し、もう暴走は免れないとメイテが覚悟した次の瞬間、ユグの暴走がぴたりと止まった。 「「「………!?」」」 「「ユグの暴走が……とまった?」」 双子の息ぴったりの実況を聞きながら、メイテはぐったりして肩で息をしているクロスに呼びかける。 「……クロス? …聞こえていて?」 「…………あぁ……。」 まだ苦し気ではあるが、はっきりと返答したクロスに、取りあえずはほっと息をなでおろす。 そこへキリエが到着した。 魔物襲来-1 END

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