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27.これから・智⑦

 ケーキを食べ終えてからも暫くの間、オレとタケルは雑談を続けていた。最初は他愛の無い話、その後はコウの話だった。最近コウはよくタケルに愚痴ってるそうだ。理由は信一を及川女史に取られたかららしい。コウと信一の間には今はもう友情以外のモノは無いのだが、ゲイバーで自分の目の前で彼女に信一を持ってかれたのが気に食わないらしい。場所が男のテリトリーであるゲイバーだったってのがその気持ちに拍車をかけているらしかった。 「智サンもたまにはコウさんの愚痴聞いてあげてくださいよ」  かなり愚痴られたんだろう、タケルのその口調からも伺うことができたから。  その後唐突に会話が途絶えた。あれっと思ってるウチに、隣に座ってるタケルの雰囲気がさっきまでとは別のものになっていた。その変わり様に戸惑うオレ。 「智サン、智サンは今でもあの亮介サンって人が好きなんですか?」 「えっ、亮介?」 「そうです。今でも好きなんですか?」 「そんなのあるワケないじゃないか。好きだったのはもう何年も前のことだよ」  真剣な顔で聞かれたその質問に、焦りながらも何とか答えた。肯定なんか絶対にしない、亮介の迷惑になることは絶対にしたくないと思ってるから。タケルは尚も真剣な眼差しのままオレの目を見つめている。オレは目をそらしそうになったけど、なんとか耐えた。なるべく穏やかな眼差しでタケルの目を見つめ続けた。  先に目をそらしたのはタケルの方だった。 「智サン、智、オレ智サンのことホントに好きなんだ。愛してるんだ、亮介サンのこと忘れさせてあげるから、絶対忘れさせてあげるから、だからオレに、オレに智さんの心も全部ください!」 「タケ、ル?」  突然抱きしめられてそう言われた。驚いて固まったままでいたオレにタケルが口付けてきた。口の中にタケルの舌が入り込んできて、オレの呼吸ごと貪っていた。タケルの舌が口の中のオレの感じるところを刺激していく。もう何度もタケルに抱かれたことがあるから、タケルはオレの弱いところを全て知っていて、キスだけなのに徐々にオレの身体は煽られていった。 「タケル、ヤメッ」  言い終わる前にまた口付けられてしまった。いつの間にかオレはソファに押し倒されてしまっていて、タケルの身体がオレに圧し掛かる。体格でも体重でも負けてるオレは突っぱねようとしたけど出来なかった。少しでも抵抗をと思ってタケルの両腕を叩いてたら、頭の上で腕を拘束されてしまった。タケルの手がオレの両手首を掴む、もうこれでオレはタケルに抵抗すら出来ない状態になってしまった。 「タケル、お願い、お願いだからヤメてくれ」 「ヤメない。智サン、オレに智サンの心をください」  こんな状態になってオレは混乱していた。心をくれって言われても、オレの心は亮介に向いていてタケルには向かない。タケルに向いていたらどんなにかラクだろうかと……。 「智……サン?」  唐突にオレは身体の力を抜いた。オレが抵抗をヤメたことに困惑したタケルがオレの目を見ていた。 「いいよ、やる、全部やる。オレの全部はタケルのモノだよ」 「――ッ!」  タケルの気持ちを知りつつも抱かれていたオレは卑怯だと思う。そしてその卑怯なオレはもっと卑怯なことをし始めたんだ。卑怯なオレはますますタケルにヒドイことをしてるんだと思う。ゴメンよタケル、全てオレが悪いんだ。  亮介……。  再度タケルに抱きしめられたとき、オレはギュッと目を瞑って出そうになった涙を堪えた。こんなオレに泣く権利なんて無いんだ。今まで以上にオレの気持ちにフタをしようと思う。亮介じゃなく、もっとタケルを好きになれるように、心がタケルだけを求めるように……。 「ぅん、あっ、はっ、ぃあ……、んんっ、んあぁぁぁ……っ」  ベッドに運ばれて、タケルの愛撫にオレの身体は素直に反応する。胸を執拗に愛撫されてオレの中心が高ぶっていくのがわかる。徐々に高まる射精感。 「いいよ、イって。胸だけでイケるでしょ」  直後オレの目の奥で星が散った。その様子をタケルは満足そうに観察していた。それからタケルは達してクッタリしているオレのモノを咥えた。タケルの舌に刺激されて徐々にまた硬くなっていく。それと同時にタケルの指がオレの後ろの孔に潜り込んできた。ローションを使って少し乱暴に解されて、オレの中にいる指は3本になっていた。 「あ――――ッ! あっ、あっ、ああっ」 「ここ好きでしょ」  タケルの指が前立腺を刺激する。何度も何度も刺激されてまたすぐイキそうになる。 「タケル、タッあっ、お願っ、もっ、挿れてっ、ぁああっ」  ガマンできなくてオレの方から強請ってしまった。指が抜けてタケルのモノがオレの中に入ってきたとき、その刺激だけでオレはまたイってしまった。 「智、愛してる、愛してる」  タケルはうわ言のようにその言葉を繰り返していた。まるでそれはタケルのその気持ちを、オレの中に沁みこませているようだった。  タケルがオレを開放したのは夜明けより少し前だったと思う。何度も何度もイカされて、ドライでイキまくって気を失った後も揺さぶられて、気がついたらまたイカされて……。  風呂場で後処理をされたときもまたイカされたような気がする。そのときにはもうオレは朦朧としていて、意識は半分くらいしか無かったようなカンジだった。  タケルは何度もオレの家に来たことがあるから替えのシーツの場所も知っていて、オレはキレイなシーツの上に横たえられた。  それから暫くしてタケルは帰って行った。何も言わず、オレの額に口付けてから……。  朝、いつものように目覚まし代わりのアラームが鳴った。それを止めてから、会社が始まる少し前の時間をセットして再び目を閉じた。さすがに身体が動かなくて会社には行けないから、今日は休むしかなかった。 「オレは最低だ……」  目を腕で覆って、そんなセリフがオレの口から零れ落ちた。

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