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45.未来を……・智③

 腹の底から笑って、笑って笑って笑いまくって、ようやっと落ち着いた頃亮介に抱きしめられた。額にキスされてそれから 「やっぱ智は笑った顔が一番だな」  そう言って優しげな顔をオレに向けた。  超久々に見るイケメンの蕩けるようなその笑顔に、恥ずかしくって思わず下を向いてしまったし。大学の頃なら慣れてたとは言え、今は久しぶり過ぎて免疫ゼロだよ。亮介わかってんのかなぁ……、その笑顔反則だってば。 「智?」 「その顔反則」 「えっ?」 「そんな顔向けられたらオレ困るじゃんか」  亮介はクスっと笑った後オレの旋毛に口付けたようなカンジがした。嗚呼もうっ、やること全部が甘すぎてどうして良いかわかんないじゃんか。照れるし恥ずかしいし、でも実はめちゃ嬉しいし……。オレはかなり自分の気持ちを持て余し気味だ。 「それでさぁ智……、ディタじゃなくて、もう1コの方のボトルはどうする?」 「えっ? ――ッ!」  もう1コのボトル……ローションだ。別に初心じゃないし、亮介と別れてから少々乱れた性生活を送った身としては、逆に亮介とそうなるのが恥ずかしいと言うか、オレ自身があの頃とは全然違うってのもあって抵抗があるって言うか……。 「とりあえずまあ、懐かしのディタグレープフルーツでも飲みますか」  何となく恥ずかしくて、視線をさ迷わせながら「あ…」とか「う…」とか分かりやすい反応をしてしまったオレに亮介は、クスッと笑ってそう提案してきた。  ちょっとホッとした……けど、微妙に残念なような……って、オレの思考がなんかヤバイ方向に行きそうな気がする。  超久しぶりに飲んだディタグレープフルーツはめちゃ甘かった。オレはほとんど酒は飲まない(飲めない)し、ゲイバーでもノンアルカクテルばっかだったから、これを飲んだのはもしかしたら高2のクリスマスパーティ以来かもしれない。  リビングのソファで、ソファの背もたれじゃなく亮介にもたれながら、他愛ない話をツマミに懐かしのカクテルを堪能した。「カイトさんに持たされた食料にグレープフルーツジュースが入ってた謎がやっと分かったよ」なんて言いながら。  気がついたら……朝だった。  お約束……、うん、お約束だ。信一と一緒に来たときに見たハズなんだけど、ほとんど覚えてなくてさ、でもきっとここは亮介んちの寝室で、後ろからがっちりオレをホールドしてるのは亮介……のハズ。って言うか、これが亮介じゃなかったらホラーだよな。  そしてこの状態に懐かしい思い出が蘇る。そうだよ、高2の亮介んちでやったクリスマスパーティでもこんなカンジだったもんな。あのお酒を飲んだ後いつの間にか寝ちゃって気がついたらこんな状態。ってことはさ、オレって進歩ないのな……。やっぱアルコールに関してだけは一生成長出来ないのかもしれないのかな。 「起きたのか?」  もぞもぞしていたからか、目を覚ました亮介がそう言ってきた。 「おはよ亮介。……なぁ、これって狙ってやったの?」 「えっ、何のこと?」  後ろからオレをギュウって抱きしめた亮介がそうとぼけてきた。チュッとうなじにキスされる。それも記憶にあるぞ。 「オレだって結構覚えてるんだぞ。って言うか、思い出したんだぞ」 「だから何が?」 「とぼけんなよー。あのカクテル飲んで寝ちゃって……って、高2のときと同じじゃんか」  くるっと寝返りを打って覗いた亮介の顔は、それはそれは良い笑顔だった。オレの問いには答えなかったけど、その顔が全てを物語ってると思う。それに対してオレはもうため息しか出ないし……。別にイヤとかじゃないけどね、してやったりってその笑顔がムカつく。 「久しぶりに智の寝顔を見れて嬉しかったよ、オレは」 「――ッ! 恥ずかしいこと言うなよ」  起きた早々いちゃいちゃするオレたちを許して欲しい。まあなんだ……、あれほどまでに頑なに亮介を拒絶してたのにって思わないで欲しい。オレだって、まさかこんな短時間で甘い雰囲気になるなんて思ってもなかったんだからさ。  朝の挨拶のような軽いキスだったハズなのに、気がつけばそれは深いものに変わってしまっていた。オレの口の中でふたりの舌が絡み合う……、もうそれだけで全身がざわついて他のことが考えられなくなってしまう。亮介の舌が去って行ってほしくなくて、オレ自身も積極的に舌を絡めてたし。 「んっ、んっ、んん―――ッ!」  突然亮介の手がスウェットの中に入りこんできて、そして掌に包まれるソレ。男の朝の生理現象にキスの興奮が加わって、オレのそこはビンビンに硬くなってしまっていた。ぬるっとした感触から先走りも出てたことが分かる……、オレはキスを続けながらも赤面して身体を硬くすると言う、ある種器用なことをしてしまっていた。  オレの口の中で動く亮介の舌も、オレの中心を包みながら煽る亮介の手も、そのどちらも容赦無く、腰から全身へ快感が駆け巡っていった。 「亮介っ、あっ、あっ、あっ、ああぁぁっ―――!」  酸欠気味でボーっとしてたからなのか、それとも亮介の行動が素早かったからなのかは分からないんだけど、気がついたらオレのモノは亮介の口の中にいた。その展開の速さにプチパニックだよ。そしてあっという間にイってしまって……。 「ごちそうさま」  無駄に良い笑顔でそう言われて瞬時に我に返った。 「亮介のアホーッ!」  即行でズボンを上げ、亮介の反対側を向いて丸まった。本当は布団を引っ被りたかったんだけど、亮介が邪魔で出来なかったのが悔やまれる。オレのその行動の半分、いや9割が照れ隠しなんだけどさ、そうしたくなる気持ちって分かるよな?  まだ起きたばかりだって言うのに、オレはもうグッタリだよ。  それから……、亮介にあやされてオレの機嫌が直るまで約5分。30のオッサンがあやされるって表現もどうかと思うけど、その表現がピッタリだったと思う。オレの機嫌が直るまでの時間が短すぎて、自分でも呆れるくらいだ。そして気がつく……、イったのはオレだけだったって。 「亮介……、あの……、オレばっかり気持ち良くなって……」 「ん? 嗚呼、オレは楽しみは後にとっておく派だから気にしないで」  ニヤっと笑ったその顔に、今度こそオレは布団を引っ被って丸くなった。

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