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49.未来を……・智⑥

「動くよ」  暫くしてオレの呼吸が落ち着いたころ、ゆっくりと亮介が動き始めた。最初はゆっくりとじらすように……亮介の抱き方だ。上手くオレの良いところを外して、それがじれったくて自然とオレの腰が動いてしまうような。だから気持ち良いところを掠っただけで全身がざわついてしまうんだ。そしてもっともっとその刺激が欲しくて、のめり込んで行く……。 「はぁ、ぁぁ亮介、もっと……」  もっと来て、もっと深く、もっと高く、もっと堕として。徐々に激しくなる亮介の動きにオレの思考がおかしくなっていく。でも、亮介が欲しいと言う思いだけは変わらない。  先に……果てたのはオレだった。それに引きずられて亮介もイき、オレの中に熱を放った。ハァハァと荒い息のまま顔を引き付けて口付けた。二人とも言葉なんかいらなくて、ただお互いが欲しい……それだけ。  少しして亮介がまた動き出した。起き上がって対面座位で。オレは亮介の首に腕をやったまま深く口付けて、亮介はオレの腰に手をやって激しくオレの腰を動かしながら。もう何年も経ってるのに亮介の抱き方はとても馴染みがあって、お互い何も言わなくてもどうすれば相手が気持ち良くなれるか分かっていて、だからオレは与えてくれる感覚に安心して委ねることができるんだ。  やっぱり……亮介がいい。亮介だけがいい。 「ごめん智、暴走しそうだ。先に謝っとく、ごめん」 「謝らなくていい。オレも欲しい。オレも止まれない」  2度目に亮介がイった後そう言われた。そんなのオレも同じだ。何度イっても何度熱を貰っても何度熱を与えても、足りなくて足りなくて足りなくて。繋がってるハズなのに足りなくて、このまま溶けて全部亮介の一部になってしまいたいくらいなのに、骨も血も内臓も全部ひとつになりたいのに、それが出来ないのがもどかしい。 「あぁぁ、亮介、亮介、亮介……、愛してる、亮介愛してる」  好きだと言ったとことはある。それこそ何度も。でもこの言葉は一度も言ったことが無かったハズ。もったいぶってたワケじゃないけど、何となく恥ずかしくて今まで言葉にしたことがなかったんだ。だけど何故か分からないけど今なら素直に言える、と言うか『好き』なんて単語じゃ足りないんだ。だからオレは熱に浮かされたように、一番しっくりくる単語を口に出していた。そして言いながら涙が零れた。  亮介の動きは止まらない、何度も何度も。オレに熱を与えて、身体中で愛を囁いて、貪欲にオレを求めてる。それが嬉しくてオレも止まらない。イきながら亮介の目を見つめてた。イきながら、きっとオレは笑みを浮かべてたと思う。 「嗚呼っ! ヤダヤダッ! まだ終わりたくない! あぁぁぁぁぁぁ……」  何度もイって、ドライでも何度かイって、そして最後に暗闇がオレを追いかけてきたときそう叫んだような気がする。本当はもっともっと亮介を感じていたかったんだ。足りない、まだ足りない、もっと、もっと、もっと……。そう思いつつ沈んでいった。  目が覚めたとき、まだ辺りは薄暗かった。オレの寝顔を見ていた亮介と目が合った。 「オレは……、どれくらい寝てたの?」  掠れた声でそう聞いてみた。既に後始末もしてくれたんだと思う。オレの身体はサラサラしてたから。亮介は口移しで何度か水を飲ませてくれた後に答えてくれた。 「2時間くらいだよ」 「そっか……。気ぃ失っててゴメン」 「オレの方こそゴメン。無理させた」 「そんなこと無いよ。オレも欲しかったから」  それからまた口付けた。 「まだ早いから、もう少し寝よう」  そう言って亮介は目を閉じた。それにつられてオレの目も閉じてくる。亮介の鼓動が体温が気持ちよくて、幸せだなって思った。  今年からまたよろしく、亮介。愛してる。  胸の中でだけそう呟いて、そしてまた夢の世界へ旅立って行った。  次に目が覚めたときは既に昼近かった。隣に寝てたハズの亮介がいないのがちょっと寂しい。おかしいよな、ベッドにいないだけで家の中にはいるハズなのにさ。でもやっぱり目覚めたときに温もりがないのは寂しい。今までそんなこと思ったことも無いのに、ヘンだよな。  まだ動き回るのはムリそうだったので、上体だけ起こしてベットヘッドに寄りかかった。それから暫くボーっとしてた。そう言えば、先月は毎週末カイトさんちに行ってたのもあって、こうやって休日にのんびりするのは久しぶりなような気がする。 「起きたのか?」  ドアが開いて亮介が入ってきた。 「おそよ、亮介」 「正しい言い回しだな。もう昼だし」  近づいて来た亮介はそう言って、オレにキスをくれた。 「リビング行くか? 暖房でだいぶ暖まったよ」 「うん。連れてってくれるか?」 「もちろん」  結局初詣に行ったのは2日の夕方だった。亮介とオレんちに移動するついでに。初詣がついでってのは本当はよろしくないんだろうけど、二人とも無理に外出しようとは思えなかったんだ。ずーっと亮介んちで一緒にいた……って言うか、まあ、察してくれ。ちなみにローションはやっぱり1本じゃ足りなかったし。亮介と繋がりながら、人間にも発情期ってのはあるのかもしれないってバカなことを考えてしまった。

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