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50.未来を……・智⑦
「へぇ……、ここが智の家かぁ」
車って便利だなって思った。亮介んちからオレんちに移動するのに電車に乗る必要が無いんだもん。別に電車が嫌いなワケじゃないけど、乗り換えとかあったから微妙に面倒だったんだ。しかも途中スーパーに寄って一週間分の食材を買ったりしたから荷物が多くなってたし。
亮介は、初めて入ったオレが住んでる部屋を興味深そうに見ていた。
「就職してからずっとここに住んでるんだ。古いから家賃も安めで助かってる」
そう言いながらオレはお湯を沸かしつつ、買ってきた食材を冷蔵庫にしまっていた。年明け早々仕事が忙しくなるのが分かってるからね、事前の買出しは必須だ。
お茶を淹れてから亮介の隣に腰掛けた。亮介んちではコーヒーだったからね、たまには緑茶もいいかなって思ったんだけど、おっさん臭かったかなぁ。でも、久しぶりに飲む緑茶が何か落ち着く……。
それにしても、ここに亮介がいるってのが不思議なカンジだ。そんな亮介だけど、お茶を飲みながら何やら考え事をしているようだった。
「何考えてるの?」
「ん? ここに智の歴史が詰まってるのかぁって、感慨にふけってた」
何アホなこと言ってるんだか。
「そうだ亮介、懐かしいもの見せようか?」
晩ご飯の後、ふと思い出してノートPCを起動した。もうスマホには入ってないけどPCのは未だに削除してないからね。
「これ……」
「懐かしいだろ? 出て行く日に写真撮っておいてたんだ」
亮介に見せたのは大学時代にオレたちが住んでたマンションだ。オレの部屋も亮介の部屋もリビングも、こうやって画像で見るだけで思い出が蘇ってくる。最後にこれを見たときはすごく辛い気持ちだったけど、今は懐かしさでいっぱいだ。その画像たちを見ながら、暫くの間ふたりでまた思い出話に花を咲かせた。
「旅行行ったときとかの写真とか持ってる?」
「嗚呼、PCに保存してあるよ」
「じゃあ今度見せてくれよ。オレ、これ以外は全部削除しちゃってたからさ」
画像を持ってるのがオレだけじゃなくて良かったって、心からそう思った。
少しずつ、以前のオレたちが戻ってきてる。まだ完全じゃないけど、そう実感できたのが嬉しい。隣に亮介がいるのが全然苦じゃなくて、むしろいるのが当たり前ってカンジがしてきてるんだ。きっと休みが終わって仕事が始まったら寂しいって思うんだろうな。こうやって、べったりくっついていれるのもあと一日だけ。そう思うと残りの時間がとても大切に思えてくる。
そう言えば、オレのベッドの真ん中にリボンが巻かれたローションが置かれてあった。そのリボンの端にはボールペンで『海斗より』って書いてあって、あの人はどれだけ用意周到なんだよって、亮介と呆れてしまったし。
ベッド脇には使いかけのローションがあったハズなんだけど消えていて、どうやらカイトさんたちが処分したみたいだった。その気遣いに心の中でだけお礼を言うと共に苦笑した。古い方は……、亮介とイタすとき使いたいとは思わなかったからね。
カイトさんはオレのことを『智ママ』って呼ぶけど、オレからしたらカイトさんの方がそうだと思うんだよなぁ。『オカン属性』ってのはカイトさんみたいな人を言うんじゃないだろうか。まあ、本人には言わないけど。
「くっ……、ぅぁ……、っぁああああ」
胡坐をかいてる亮介に跨って、オレの方から繋がった。何度繋がっても最初だけは未だに慣れない。呼吸を整えて少しずつ……。亮介のモノが半分まで入ったとき、腰を捕まれて一気に落とされた。その刺激に目に星が飛んでイきそうになる。
「智、智」
亮介がオレを求めてくれる。それだけで嬉しくて幸せで、そしてそれ以上に亮介を求めてしまう。キスして、揺さぶられて、その与えてくれる刺激に息ができなくなるくらい感じてしまう。
いつの間にか体位が変わってオレは後ろから貫かれていた。そのまま起き上がって背面座位へ。後ろの刺激が気持ち良くて思わず片手で自分のモノを扱いたら、手を取られてしまった。
「後ろの刺激だけでイって」
耳元で囁かれるその声に、更に中心に血が集まっていく。
亮介にゆさぶられながら、その動きに合わせてオレの腰も蠢く。耳朶を口に含まれつつ舌で刺激され、首筋にキスされて甘噛みされて、空いてる手では乳首をいじられて……、一度に与えられるその刺激にオレの思考が溶けていく。オレは巨大な水槽の中を漂い、ときには波に流され、そして泡と一緒に弾け飛んだ。
「嗚呼っ、もうダメ、イク、イク、イク―――ッ」
激流に飲まれて遥か彼方まで流されて行くよう。
でも最後に流れ着くのは亮介の腕の中で、オレは安心して目を閉じることができるんだ。
眠りにつく前に亮介とひとつ約束事をした。亮介の提案に少し戸惑ったけど、直後開き直った。何を戸惑う必要がある? その約束事はオレだって心の隅で望んだことだ。だからもう、迷うことなんて無いんだ。
「今から楽しみだ」
そう言って亮介はオレにキスをくれた。そうだ、これからだ。これから始まるんだ。
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