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第4話

「……記憶がない? 智大、俺のことが分かるか?」 僕は静かに首を振った。 その瞬間がくんと膝をつく男。 「そっか……智大はいいな。 何も覚えてないのか?俺とのことも、俺たちに起こったことも全部、全部忘れちゃったのか? いいな、いいよな、俺も出来ることなら全部忘れてしまいたいよ……」 「ハルカ……」 僕は2人のやり取りをぼーっと見つめることしか出来なかった。 何故彼が泣いているのか、何故担当医も泣きそうになっているのか。 男2人が悲しむその姿は余りにも異様で、僕は居心地が悪くなった。 「あの、」 僕から声をかける。 「僕と貴方は、どう言う関係なのでしょうか……?」 彼がぐっと息を飲む。 「……恋人だよ。」 そういう彼は優しい顔をしていた。

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