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第2話
2年前から一緒に暮らしているキリンは、ベンガルとかいう種類の猫だ。ヒョウとかチーターみたいな柄が人気の猫らしいんだけど、うちのキリンの背中は見事なまでにキリン柄。
俺がちょうど寂しかった時期に、実家の母親の友達が仔猫の里親を探していて、まだ手のひらサイズだったキリンに一目惚れした俺は、小さな体を抱いて帰った。
動物飼ってるやつって、みんな言うだろ?
運命の出会いだったって。
俺たちはまさに、そんな感じ。
俺がベッドに座って下の引き出しからおもちゃを選んでいると、キリンが寄ってきて体を擦りつけてきた。
俺のシャツに、金色の毛がつく。
すり寄ってくる背中を撫でてやると、キリンは喉の奥でゴロゴロ鳴きながらぐんと伸びて、俺の唇をペロリと舐めた。
「ちょ、おいやめろって。ツナくせぇから」
そう言ってもお構いなし。むしろわざとかと思うような執拗さで、キリンはザラザラした舌で俺の唇を舐め続けた。
体長70センチのキリンは、後ろに避けようとした俺を押し倒し、口の周りを舐めたり顎を甘噛みしてくる。
滑らかさに欠ける舌の感触に、その気持ち良さを知ってる身体が疼いてきた。
「わーったから、ちょっとどけって」
観念した俺が自分のシャツに手をかけると、キリンは勝ち誇ったようにフン、と鼻を鳴らしてベッドから跳び降りた。引き出しから黄色いディルドを咥えて来たのを見て、やっぱりそれか、と思う。
これは俺の、というよりキリンのお気に入りのおもちゃ。黄色いボディに茶色いダイヤ模様が入っていて、デフォルメされた2本のツノと顔のラインが程よい突起になってる、キリン型のディルドだ。ネットで見つけて俺が飛びついて家 にお迎えして以来、使用頻度がめちゃくちゃ高い。
キリンはたぶん、ほんとは俺に自分のを挿れたいんだろうと思う。でもそれができないから、代わりにこれでも挿れとけって感じで、渡してくるのが大抵このキリンディルド。
普通に人のちんこの形のとかも持ってるんだけどな。
だいたい、キリンのほんとのペニスは、こんなかわいいのじゃない。もっと赤くて、長くて、凶暴なやつだ。
たぶんキリンは、それを知らない。
だって猫だしな。しかもまだ2歳だ。
俺がそれ見たのは、忘れもしない7歳のとき。
テレビでキリンの交尾を見た。アダルト動画とかじゃない、普通に子どもが起きてる時間にやってた、ドキュメンタリー番組だったと思う。
黄色い脚の間から飛び出してたアレが、異様に真っ赤だったことがいやに記憶に残ってる。
それからしばらくして、キリンの交尾はオス同士がほとんどだって知って、じゃああれもそうだったのかなって、胸がざわっとして。
あれを、お尻に入れるの?
って、思ったのが、俺の性の目覚め。
テレビ局、責任取れよって、まぁそんなことは言わないけどさ。
そっち側からの目覚めだったから、俺は7歳のときから筋金入りのゲイネコだったってことなんだろう。
「ん…… 」
ローションで潤したディルドを、ゆっくり挿れる。
持ち主の意思に身体が抵抗するのは、最初だけだ。先端が入ればそれからはするすると、肉壁を割り開いてシリコンの棒は進む。
左手は、ローションをつけた指で胸を弄る。触られ慣れた俺の乳首は、少し触れただけでツンと勃ち上がった。
息をついて目を閉じると、次の瞬間、右の乳首に刺激を感じて背筋が粟だった。生暖かいザラッとしたキリンの舌が、繰り返し乳首を舐める。少しの痛みと、甘い喜びを感じた。
「は…… 気持ちい…… 」
薄目を開けて見ると、俺に乗り上がって乳首を舐めるキリンの耳の向こうに、あの男が立っているのが見えた。
やっぱ、ガン見してるし……
心なしか、距離も少し近い。普段はすみっこ暮らしでも、動くこともできるらしい。
「…… 近くで、見てぇの?」
そう言うと、キリンがビクッと跳ねて背中の毛を逆立てた。乳首から口を離し、振り返って男を見る。威嚇するように、頭を下げてフーッフーッと低く唸った。
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