5 / 6
第5話
幸せなのに不安がつきまとう。
黙っているのもつらくて、遥はどうでもいいことを話す。
「毎回思うんだけどさ、この部屋で一人暮らしは広過ぎないか?」
「まぁ……確かに広いかな」
シンプルなソファーとローテーブル。
これがワンルームなら、納得するけれど……この部屋の他に個室があるのだから、贅沢だなと感じる。
(やっぱり、家族が戻ってくるのかな?)
ここに咲良の家族が戻ってくるなら、気軽にこうして泊まりに来るのは難しい。
ただの友人なら気にしないけど、遥にとって咲良はすでに失えない恋人だから。
嘘でも友人だと言われたくないし、言いたくない。
遥はふかふかのソファーに座る。
包み込まれるようなソファーは遥のお気に入り。
薄いベージュ色も。
この部屋はナチュラルな色合いに整えられて、観葉植物がアクセントになっている。
(自分の部屋より居心地が良いから、タチが悪い)
日々、咲良に…咲良の空間に遥は飲み込まれていく。
それもまた幸せだ。
ともだちにシェアしよう!