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第10話

「……っ、あぅ」  イアンの低い声が、鼓膜を揺さぶるように響き、マシューは堪らずに甘い声を零した。  イアンの言う通り、マシューは昔から耳への刺激に弱い。耳元で囁かれるだけで身体から力が抜けていく。  幼い頃は、イアンがふざけて擽り合いを仕掛けてきたが、決まって最後は耳をふわふわと弄られて、マシューが降参してしまっていた。  それを分かっていて、イアンは執拗に耳を責め始めた。  獣に変化した耳の縁から、徐々に中へと熱を纏った舌先が侵入し、耳奥でくちゅくちゅと音を響かせる。  狼の熱い唾液で鼓膜が覆い隠される。 「……や、ぁ、……だ、め」  尾骨の辺りがムズムズして、身体が一気に火照っていく。  口吻を大きく開き、三角の耳ごと全部、狼の口にぱくりと咥えられ、ジュッと音を立てて吸われ、マシューはイアンの身体の下で泳ぐように身をよじる。 「ひ、ゃ、あぁ……っ、ん」 「ふふ……マシューは、そんな可愛い声で鳴くんだね。知らなかったよ」 「や、やめて……いあん……」  まるで幼い子供のように、舌足らずに名前を呼ばれて、ぞれがイアンは嬉しくて余計に耳を責め立てた。  三角の耳の先、裏、そしてまた中へと、何度も何度も毛繕いするように舐めては、甘噛みを繰り返す。 「……や、も……許して」  縛られた両手は頭の上にあるから、動かす事はできる。マシューは耳責めに耐えられずに、その手を動かして抗おうとした。  縛られていると言っても、すぐに解けそうなくらい緩い。左右に引っ張っただけで外れてしまいそうなくらいに。  だけど、すぐに気付いたイアンの手に止められて、またシーツに縫い付けられる。 「……駄目だよ、外したら。同意した事になっちゃうよ?」  今にも吹き出しそうに、笑いを含んだ声で咎めて、イアンの手はマシューの下肢へと伸びる。 「──っ、あ!」  マシューのそこは、触らなくても分かるくらいに、スラックスの黒い布を持ち上げていた。 「こんなに勃たせて……長老達に言い訳出来ないじゃないか」 「あぅ、ダメ……触ったらダメ」  大きな手の柔らかい肉球で、布越しにやわやわと揉みしだかれては堪らない。 「ぅ……ぅっ、……ぁ……ッあ」  下着の中で、マシューの屹立はのたうち、呆気なく弾けてしまう。  じわりと濡れる感覚は、イアンの手にも伝わっているはずで、マシューは恥ずかしさに顔を背けた。

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