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第11話
マシューの眦に、涙が滲む。
唇を噛み、瞼をきつく瞑ると、雫が一筋ぽろりと零れ落ちた。
主人の前で、こんな醜態を晒してしまうなんて。このまま消えて無くなりたい。
イアンに跨がられた状態で、縛られた手も動かせない。隠すことさえ許されない。
「……可愛いね、マシュー」
流れた涙を、イアンが熱い舌で拭い、甘い声で耳元に囁き、触れる。
「っ、ん……」
「お前は、感度が良いんだね。それとも、私に犯されると思うと興奮した?」
──追放されてもいいの?
耳元で問われて、マシューは必死に首を横に振る。
「……ち……ちが……興奮なんてしていません」
「嘘……」
「本当……で、す」
「じゃあ、どうして……ここ、まだ勃ってるの?」
「ひっ、ああっ」
濡れた股間をスラックスの上から撫で上げられて、マシューはイアンの下で身体を跳ねさせた。
イアンの言う通り、そこは随分な量を出したはずなのに、まだ硬度を保ち、スラックスの布を窮屈そうに押し上げていた。
これ以上、醜態を晒したくない。
マウントを取られたまま、咄嗟に起き上がろうとしたけれど、イアンに肩を押さえ込まれ、敢え無く戻された背中を柔らかいスプリングが捕らえた。
「いいね、燃える。そうやって抵抗してくれなきゃ、無理矢理犯してることにならないものね」
「イアン様……っ、ふ……っぅ」
がぶっと大きな口で、顎も唇も鼻までかぶられて、声を奪われる。
長い舌が鼻先を舐め、唇をつつき、マシューの舌を絡め取る。
「……んーっ、ふ、っ」
苦しい。顔半分が狼の荒い息に包まれて。でも温かくて心地良いと思ってしまう。
しかし、カチャカチャとベルトを外される金属音が遠く聞こえて、マシューは身体を強張らせた。
「んーっ、ぅ、んー」
伸し掛かる身体を押し退けようと藻掻き、自由になる足をばたつかせ抵抗する。けれど、スラックスも下着も簡単に取り払われてしまった。
漸く解放された唇を大きく開き、胸いっぱいに空気を吸い込む。その途端、マシューは悲鳴とも、嬌声ともつかない声を上げた。
「ああっ、イアっ、ん、ぁぁっ」
主人が自分の股間に顔を埋め、硬く勃ち上がる陰茎を口の中に含んでいる、目の前の光景が信じられない。
鋭い牙が優しく触れ、甘く噛み、長い舌で巻き付くように包まれて、きつく吸い上げられる。
────気が狂いそうに、気持いい。
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