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第12話

 ねっとりとした唾液の滴る音が部屋に響く。その音に余計に煽られて、身体の芯から沸き上がる熱を抑えられない。  身体全部が心臓になったみたいに、ドクン、ドクンと振動する。  呼吸が乱れ、喉が渇く。  分厚いカーテンで遮っていても、満月の波動が、肌をピリリと刺激するのを感じる。  月のパワーに引き寄せられる。  押し寄せる性衝動に、理性が飛びそうになる。 「……っは、……は、ぁっ、あ」  我を失いそうになっていても、マシューは動かすなと言われた手を頭の上で縛られたまま耐える。  拳を作った手のひらに、爪が食い込んでいるのも気づかずに、舌を出して喘ぎながら。 「……ッ、あっ、もう……っ、う」  水位が限界を超えてくるのを訴えると、イアンの腕が腰に絡みつく。  熱い口の中で、『いけ』と言わんばかりに、舌を絡めながらきつく吸い上げる。 「あっ、ぁ、っ、駄目……いあん……放っ、せ」  このままでは、主人の口の中を汚してしまう。  だけど、イアンの口淫は、更に激しくマシューを追い立てた。 「────ッ、ぅ、……っ」  のたうつ腰をイアンの腕に押さえ込まれ、マシューはその口の中に欲を放ってしまう。 「駄目だ、飲む、な……、くっ……」  狼の射精は長く続く。自分では止められない。  とろとろと流し込む白濁を、イアンは舌で味わい、ゆっくりと残滓まで吸い上げて、喉を鳴らして飲み干した。  肩を上下させるマシューの荒い息の向こうで、イアンが口元を汚す粘液を舌でペロリと舐め拭う。  主人にとんでもない事をさせてしまった。  駄目だと頭では分かっていても、快楽に身を委ねてしまったのも確かだった。  後悔と後ろめたさに襲われながらも、蕩けた身体は気だるく弛緩する。  しかし、力の抜けた脚を持ち上げられて、マシューはまた身体を固くした。 「い、イアン様っ」  露わになった窄まりに、イアンが鼻先を擦りつけてくる。 「だ、駄目です、そんなとこ」  身を捩り、逃げようと四つん這いになると、ぎゅっと尻尾を掴まれる。 「────あっ……」  赤みがかった茶色の毛の、ふさふさとした部分をイアンはハグハグと甘噛みをする。 「気づいてなかったの? 身体が変化したことに」  イアンのいう通り、気づいていなかった。さっきまでは耳だけだったのに。  鋭い牙と、鋭く伸びた爪、尻尾、全身を覆う赤茶色の獣毛。そして、完全な獣の頭。  ウェアウルフは、完全な姿になるまでは、いくつかの段階がある。  満月の光を浴びると、一気に変化するが、そうでない時は、興奮の度合によって徐々にその姿を変えていく事がある。  今夜の満月の波動と、イアンの愛撫に、知らぬうちにマシューの身体は本能に従ったのだろう。 「お前のこの姿を見るのは、久しぶりだ」  そう言って、イアンは尻尾を持ち上げて、その下に隠れている小さな窄まりに舌を伸ばした。

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