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第13話

「──っ、駄目……! イアン、さまっ」  イアンは、逃げようとする腰を掴んで引き戻し、尻臀を割り開き、Ωのように濡れることのないそこを、唾液を纏う舌で舐め解す。  これからそこにイアンの雄を受け入れさせる為に。  両脚の上に跨り、動きを封じ込められる。 「……どうか……お許しを……」  マシューは、うつ伏せのままシーツに顔を埋めて、くぐもった声で懇願した。  自分のような雑種が、高貴な白の王と身体を繋げるなんて、許されないことだ。  同じ雑種でも、黒や茶と違い、赤みがかった毛並みは、これまでどんな異種と交わってきた遺伝子なのか分からない。   祖先が氷の大地を離れ、長い時の間、本能のまま繰り返されてきた交尾によって生まれた変種だ。  マシューは、自分の赤みがかった獣毛が嫌いだった。ずっとコンプレックスに思ってきた。  だからこそ、美しいイアンの白が眩しかった。憧れて、焦がれて、守りたいと思った。  自分の穢れた身体と繋がるという事は、高貴な白を汚す事になる。そんな気がしていた。 「……ひぃ、っ、ぁ」  けれど、強引な熱い舌先が体内に入ってくる。柔らかく蠢き、内壁に唾液をぬるりと擦りつけていく。  イアンの湿り気を帯びた呼気が尻臀を撫でる。逃げようとすると、咎めるように牙でかぶりと齧る。そして長い舌がもっと深くまで入ってきた。 「……ッは……あっ、ぁ」  潤わないはずの中が、唾液の熱に蕩けて濡れる。奥の襞がイアンの舌を誘うように蠢いて、きゅぅっと疼く。  これは、してはいけない事のはずだった。侵してはいけない聖域だった。感じてはいけない感覚だった。なのに気持ちいい。抗えない。  でも本当は────  初めから、抗ってなどいなかったのかもしれない。  ウェアウルフの白い王が、自分の身体に触れてくれている事を、心の底で隠れて悦んでいる。  だから従順なふりをして、解ける手枷をわざと解かない。  本当は、もっと先を望んでいる。  マシューは、そんな自分の浅ましさにぞっとして、身体を戦慄かせた。  首を竦め、震える背に、イアンが覆いか被さるようにして、舌を這わせる。 「マシュー……」と、囁くように名前を呼んで、長く薄い舌が背骨に沿って、下から上へとなぞる。 「お前の毛は、柔らかくて心地良い」  マシューの毛色の悩みを知っているのか知らないのか、イアンは、頸に顔を摺り寄せて、言葉を続けた。 「この夕映えのような色が、ずっと小さな頃から好きだった」

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