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第24話

 マシューは驚きを隠せなかった。  まさか主人が使用人の部屋を訪ねてくるとは思ってもいなかった。 「……ど、どうかされましたか?」 「もう、今から立つんだろう? その前にお前の顔を見ておきたくてね」  慌てて駆け寄るマシューに、イアンは、にこりと美しく微笑む。まるで昨夜の事など気にも留めていないかのように。  そして、マシューの部屋のドアを指さした。 「ちょっと入ってもいいかな」 「え……でも、こんな使用人の部屋に入ってはいけません。私も今からイアン様の部屋に伺おうと思っていたところです。すぐに参りますので、どうかお部屋でお待ちください」  マシューの言葉に、イアンは少し不満げな表情を浮かべた。 「いいだろう? 幼い頃は、よくお前の部屋でも遊んだじゃないか」  そう言って、マシューの制止も聞かずにドアを開け、スタスタと中に入ってしまった。 「……い、イアン様!」  入っていく背中を追い、マシューも部屋に入った途端、至近距離でくるりと振り返ったイアンに、唇を重ねられた。 「……っ」  突然の行動に、マシューは声を出す暇もなかった。挿し入れられるイアンの舌を抗うことなく迎え入れ、誘われるまま、強引なキスに応えてしまう。  ぐいっと力強く抱き寄せられると、無意識に広い背中にしがみついてしまう。  イアンがドアに手を伸ばし、マシューの背後で鍵を掛ける音が、静かな部屋に響いた。  角度を変えて唇を重ね直す度に、キスが深くなっていく。  逞しい体躯に押されて後ずさると、背中にドアが当たる。  密着する下腹に、お互いの半身が意思を持ち始めているのをスラックスの布越しに感じた。  イアンの手が下へ降り、双丘をやわりと揉みしだく。  膝で脚を開かされ、熱く滾り始めている中心をぐりぐりと刺激される。  いけない。  駄目だ。  そんな言葉が頭を過るのに。その手を、熱い唇を、拒めない。 「……もっと、してもいい?」  唇が触れ合う位置でイアンが切ない声で囁いた。言葉と共に吐き出される熱の籠った吐息に、身体の芯から蕩けさせられそうだった。 「……駄目……です」  散らばった理性を掻き集め、途切れ途切れに答えると、イアンは「ふっ」と小さく笑う。・ 「これは、おはようのキス。さっきしてくれなかったから」  ──おはようのキス? 「……なんですか? それ……」  イアンの意外な言葉に面食らい、マシューも思わず口元を緩ませた。  そして、尚も“らしくない言葉”が、マシューを驚かせる。 「さっき起きた時、キスしてくれるのを待ってたのに、何もしないで部屋を出て行ったでしょ」

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