3 / 6

第3話

「------、-----------」 「……----、---------------」 ……ガタッ 体が痛い、ぼんやりと意識が浮上してきた。 何を言っているか分からないが、話し声と揺れているということはなんとなく分かった。 周りの様子を見ようとするが、目を開けることが出来きない。布で覆われてるようだ。 (……どうなってんだ?) あれ?と上手く働かない頭を必死に使い記憶を辿る。 またガタリと揺れる。 「……おい、もっと静かに走れねーのか」 静かであるが、実に不機嫌な通る声が聞こえた。 「ああ゛?いいだろ別に」 今度は軽い喋り方をする男の声。 頭の中で先程のことがフラッシュバックした。 (何これ、誘拐?やばっ……逃げないと) 体を動かそうとしたが、手首、足首、腕の辺りに抵抗があった。後ろ手に手首を縛られ、足首、両腕を巻き込み胸の辺りをきつく縛られている。 抵抗の際でうまく動けず、動いた反動でグラリと横たわる体が重力に従い落下する。 「ヒッ……!!!」 ドスッと正面から落ちた。体が痛く唸るような声が出た。 運転席の男はミラーを、助手席にいる男が後部座席の方をチラリと見る。 拘束した男は落ちた衝撃で体が痛むようで唸り声を上げていた。 「起きたか…。」 どちらとも無くボソリと言葉がでた。 「大丈夫か〜、“(きょう)”?」 不審者男から自分の名前を言われビクッと体が跳ねた。 (名前まで知られてんのかよ…) 「……っ、なん…で」 絞り出すようにして出した自分の声は、とても震えていた。 「保険証、免許証、スマートフォン、その他色々持ってただろ」 それを見りゃあ分かるだろと答えが返ってきた。 絶望的すぎる、個人情報バレてる。 「それと、俺達の遊びに巻き込まれたアンタの運の悪さを悔やむ事だな」 ククッと楽しそうに煙草の男は笑った。 「誘拐……だろこれ、身代金、なら出す奴……いねーぞ。それに、警察だって……動くだろ」 「脅しか?そんな事を分からずにやってる馬鹿と一緒にするなよ。そもそも金目的でもない。単なる思い付きの遊びにたまたまアンタが捕まっただけの事だ」 煙草の男は淡々と話した。 遊びだと?こんな事をして遊びで済むものか。 「……ッ、ふ…ざけんな……」 ピクリと空気が動く感じかした。布の擦れる音。 何だと思う内に、首の後ろにトンっと衝撃が当る。 ―――― 「…………」 …………、バッ 「ガシャンッ」 「!!?」 目が覚め、勢いよく横たわる体を起こせば、ガシャリと右手首に繋がれたベルトから延びる鎖が音を立てた。 「何だ、……これ」 ベルトを外そうとするが、ベルトは頑丈でキツく、手が抜けそうにない。更に南京錠が付いておりどうにも外れそうにない。 よく見れば、左手首、両足首にも同様に黒いベルトが付けられていた。但し、右手首と違い鎖は付けられてはいない。 繋がれた先にはコンクリートの壁。その壁から取っ手のように突き出たところに繋がっていた。 何度引っ張り、ベルトに齧り付いた所で意味が無い。 そうこうしているうちに、ガチャリと扉が開く音がした。音の方向を見れば、薄暗さがある部屋の中でも誰が入ってきたのかは分かった。 「……随分、元気そうだな」 静かに響く低音。スーツを着ていた煙草の男だ。 「っ!!……てめぇ、!!!」 ギロりと睨み、殴り掛かりたいが右腕の拘束がガシャりと音を鳴らすのみでろくに動けない。 「クククッ……分からねぇよな、手前の状況なんてよぉ」 男は着ているジャケットを近くの椅子に掛けた。 シュルっとネクタイをも外し、Yシャツの首元を開けた。 終始こちらを面白そうにギラギラした目で見てくる男がとても気持ち悪い。 男が一歩踏み出す。 あまりの男の異常さに、足が後ろに下がる。 そうやって後ろに下がったところで逃げ道なんて無い事は分かっていても、体に恐怖を感じてしまってからはいう事をきかなくなってきた。 やがて、ドンッと背中に壁が当たる。 数歩前に男がいる。 自分の目線より上の方に、ギラつく目がある。 相手の目から目が離せなくなっていたら、腹部に鈍い衝撃が当たった。 男は実に楽しそうな顔をしていた。

ともだちにシェアしよう!