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第27話

 かあっと顔が熱くなる。万が一奎吾にバレたらどうしようと、希はバスタオルの下で、落ち着かなさげに身体を動かした。  奎吾がマッサージを再開したので、希はほっとした。わずかに反応を見せた希のソレも、なんとかおとなしくなったようだ。  奎吾は何も言わなかったが、無言の空気からは、いきなり何を言い出すんだろうという彼の気持ちが伝わってくるようだった。  マッサージを終えた右側がバスタオルに包まれると、希はああ・・・・・・とがっかりした。もう四分の一が終わってしまった。そうして今度は左腕を奎吾にとられ、至福の息を吐く。 「・・・・・・正直、最初はさ、マッサージなんてそんなんインチキとまでは言わないけど、高い金を払った者の気のせいだろくらいに思ってたんだよ。でも、初めてあんたのマッサージを受けたとき、びっくりするぐらいに身体が軽くなった。なんていうかさ、気持ちまでが生まれ変わったみたいにすっきりした。できるなら、もう一度あんたの施術を受けてみたかった。あんたが俺に二度と会いたくないって気持ちはわかるんだ。だから、もう二度とこの店にもこない。・・・・・・あんたたちの世界に土足で踏み込むような真似をして悪かったな」  奎吾からの返答は返ってはこず、希は当然かと思った。謝ってすむこととすまないことがある。希の行為は、彼らをひどく傷つけたのだろう。それは酔っていたからだとか、希の側に何か事情があったからなどの言い訳はきかない。  このマッサージが受けられなくなるのはおしいけどなあ・・・・・・。  希は仕方ないかと内心でため息を吐いた。もう二度と奎吾のマッサージが受けられないなら、せめてしっかり満喫したい。そう思うのに、希の目はとろんと落ちてしまう。  次に起きたときはすべてのマッサージが終了した後で、奎吾に起こされた希はあまりのショックに呆然とした。  寝てしまったー!

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