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第33話
「マジで? まさかあれからまったく飲んでないとか?」
かあっと赤くなった希に、奎吾は小さく目を瞠った。
「・・・・・・そこまで後悔してるなら、同じ失敗はしないだろ」
「えっ」
奎吾はウェイターを呼ぶと、慌てる希はお構いなしにもう一杯ビールを頼んでしまった。やがてウェイターが新しいグラスを持ってきた。
「ほら。お疲れ」
細身のビールグラスをカチンと合わせ、おいしそうに飲み干す奎吾を、希は恨めしげに眺めた。すると、奎吾の目がすっと動いて希を見た。
「なんだ。反省したんじゃないのか?」
それとも反省を口にしたのは嘘だったのか。揶揄うように細められた瞳から問われているようで、希はグラスを手に取った。細かな泡を発する金色の液体を見て、ごくりと喉を鳴らす。
ちょっとだけ・・・・・・。ほんの一口だけなら・・・・・・。
ほろ苦さを含む冷たい液体が喉を滑り降りた瞬間、希は心の中で「うっまー!」と叫んだ。何せ久しぶりのビールだ。もちろん、嫌いで飲まなかったわけじゃない。希はアルコールに強くなく、すぐに眠たくなってしまうが、前回のような失敗は初めてだった。本音を言えば、ずっと飲みたかったのだ。
仕事上がりの疲労が残る身体に、久しぶりに飲んだアルコールが染み渡り、細胞が喜んでいる。うまい、うまいと喝采を上げている。そのとき奎吾が頼んだ料理が出てきた。
「ここは料理も結構いける。食えよ」
「う、うん」
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