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第50話
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大晦日。
希の家では毎年炬燵で紅白を見ながら年越しそばを食べるのが習慣だ。なのに、二十七年間生きて初めて、希は大晦日の夜にひとりだった。看護師の母はこんな日まで仕事で、そのこと自体は珍しいことではない。けれど、例年は明がいた。そんな明は母に高校の先輩と初詣にいく許可をもらっていたが、希は明の言う高校の先輩がただの友人でないことを知っている。
ひとりだって俺は寂しくなんかないぞ。そう強がりを言ってみても、胸の中は寂しい気持ちでいっぱいだった。なんだかこの世界に自分だけがたったひとり取り残されたような気持ちになる。
希は食べかけの蜜柑を放り出し、ごろんと寝転がった。胸の上に両手をあて、目をつむって賑やかなテレビの音に耳をかたむける。
ーーお前は、普通に女と恋愛をして、家庭をつくることができる。俺なんかとは最初から関わってはいけなかったんだ。
そう告げた奎吾の声が甦って、胸が苦しくなった。奎吾はどうして自分なんかが希と関わってはいけないなんてことを言ったのだろう。これまでずっと楽しかったのに。希の勘違いでなければ、それは奎吾だって同じに思えたのに。大晦日、一緒に過ごそうかって言ったくせに。
「うそつき・・・・・・」
すん、と鼻をすすって、希は瞼をこする。しばらくそうして瞼に手の甲をぎゅっと押し当てていると、悲しい気持ちが増してきた。
「俺は間違いなんて思ったことは一度もないぞ・・・・・・」
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