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第51話
どうしてあんなことを言ったのか訳を聞きたいのに、奎吾はあの夜から一度も希の電話には出てくれない。ラインも既読のマークがつくだけで、返信はこない。
あと一時間もすれば新年が明ける。なのに希は実家の炬燵でひとりぼっちだ。
そのとき、カチャカチャと鍵を開ける音が聞こえた。合い鍵を預けているような親戚はいない。デート中の明のはずもない。思い当たる人物は誰ひとり浮かばず、希は泥棒かと身を固くした。
「あー、のぞちゃん! やっぱりいた!」
「あ、明っ!?」
明はリビングに入ってくると、情けない兄の姿を見て顔をしかめた。その背後にはあの日希が暴言を吐いた高校の先輩とやらもいて、ぺこりと頭を下げた。
「お前初詣はどうしたんだ? 先輩と一緒にいくって、楽しみにしてたじゃないか」
希の言葉に、明はバツが悪そうだったが、すぐにキッとした表情になって、「もう、この部屋空気が悪い! 換気! 換気しよ!」と窓を開けた。とたんにびゅ~っと身を切るほどの冷気が入ってきて、希は身体を縮こませる。
「さ、寒いっ。寒いっ」
炬燵に潜り込む希に、明は窓を閉めてくれた。それから希の前に回り込む。
「のぞちゃん、いったいどうしちゃったの? ここ最近ののぞちゃんはおかしいよ。それまでずっと楽しそうにしていたから、好きな人でもできたのかと思っていたのに」
「好きな人・・・・・・?」
亀のように炬燵布団から顔だけ出した希に、明は違うの? と首をかしげた。
・・・・・・好きな人? 蒲生が俺の・・・・・・? まさか・・・・・・。
「・・・・・・でも相手は男だぞ?」
往生際が悪く訊ねる希に、明は顔をしかめた。
「それまだ言うの? 少しは変わったのかと思っていたのに。好きな相手が女だとか男だとかって、のぞちゃんにとってそんなに大事なこと? のぞちゃんが一番大切にしたいことは何?」
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