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第60話
濡れたものをまとった奎吾の指が、希の双丘のあわいをすり、とさする。ローションを垂らされ、慣れない感覚に希は顔をしかめた。やがて奎吾の指が慎重に希の中に入ってきた。ひどい違和感はあったが、痛みは感じなかった。濡れた奎吾の指が希の中を探っていく。
「痛くないか?」
訊かれて、希はこくりと頷いた。そのようすを見ていた奎吾は、もう一本指を増やした。
他人の手が自分でも触れたことのない場所を探っている。それは正直気持ちのいいものではなかった。額に汗が滲み、腹の中に強烈な違和感がある。蒲生、と希が男の名前を呼ぼうとしたそのときだった。奎吾の指が希の中のある一点に触れた。
「うあっ? あ、あーー・・・・・・っ!」
希は大きく目を見開いた。全身の肌が一気に粟立つ。希の後孔内は蠕動するように奎吾の指を呑み込もうとした。自分の身体がどうなってしまったのかわからず、希は恐怖を感じた。
「や、待って・・・・・・っ」
奎吾は苦痛を堪えるようにくっと呼吸を呑んだ。汗に濡れた希の髪を掻き上げ、額に唇を押し当てる。
「挿れるぞ」
固くそそり立った奎吾のそれが希の後孔に押し当てられ、襞を押し広げるようにぐうっと中に入ってくる。
「あっ! あっ!」
質量を持った物体が自分の身体の内側に入ってくる感覚に、希の身体は無意識に逃げようとする。
「がも・・・・・・うっ! こわい・・・・・・っ!」
「希。希。呼吸をしろ」
そのとき、額に汗を滲ませ、苦痛を堪えている奎吾が目に入った。
「あ・・・・・・っ」
大きく見開いた希の目から、ぽろっと涙が零れ落ちた。
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