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第62話

 奎吾が自分の名前を呼ぶたびに、希のそこは悦ぶようにきゅうーんと収縮する。やがて抽送は激しくなり、希は爪を立てていることにも気づかずに、奎吾の背中にしがみついた。 「希・・・・・・っ、好きだ・・・・・・」 「あーー・・・・・・っ!」  目の前がスパークする。希は、ぶるぶるっと身体を震わせた。その瞬間、奎吾もイったのだとわかった。脱力した奎吾の体重が、希の上に重なる。まるで全力で運動した後のような気怠い疲労感があった。もう指先の一本だって動かしたくない。これまで感じたこともないような猛烈な眠気が希を襲う。 「・・・・・・悪い。これ以上はもう無理だ。話はまたあし・・・・・・た」 「お、おい、希・・・・・・っ?」  やがて奎吾の焦ったような声が聞こえてきた気がするが、希は眠りの中へと引き込まれていた。 「よっ。おつかれ」 「金井」  仕事帰り、希はエレベーターを待っているところを、金井に声をかけられた。 「知ってるか、大阪の事業所、業績が悪くて大幅な立て直しがあるんだよ」 「ああ。噂には聞いてる」  会話をしながら、そのまま一緒にエレベーターに乗り込む。金井とはバーで飲んで以来、あまり話せていなかった。年明けから春にかけて、お互いに抱えている仕事が忙しくなったのと、以前のように金井が希を構うことがなくなったからだ。天地がひっくり返りそうですよね~、というのは武居さんの弁で、希は何も答えなかった。そのときエレベーターが一階に着いた。そのまま並んで出口へと向かう。

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