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第64話

エピローグ  希が奎吾との待ち合わせ場所に着いたとき、男は花びら舞い落ちる桜の下にいた。声をかけるのも忘れて、希はしばし見とれてしまう。そのとき、奎吾が希に気がついた。希を見たその目がふっとやわらぐ。 「お疲れ」 「が、蒲生もお疲れさま!」  なぜか少しだけ照れてしまった希に、奎吾は不思議そうな視線を向ける。今夜は希が以前無礼なことをしてしまったバーに、一緒に飲みにいく約束をしていた。前の失敗をちゃんと謝りたいんだ、と告げた希に、奎吾はふっと微笑んだ。  はらはらと花びらが舞い落ちる夜の神社を、奎吾と並んで歩く。神社には屋台もいくつか出ていて、すれ違う人々の浮き立つ心が伝わってくるようだ。 「なんかきょうおかしくないか?」 「え? そんなことないよ」  慌てて否定した希に、奎吾が片方の眉を上げた。すべてを見透かすような瞳に見つめられて、希はそわそわと視線を揺らした。 「か、金井が・・・・・・っ、会社の同期のやつが大阪に異動になるって聞いたから・・・・・・」  ぽろっと白状してしまった希は、奎吾の表情を見てしまったと思った。 「寂しいのか?」  不機嫌そうな低い声に問いつめられて、希は「ちょ、ちょっとだけ・・・・・・」と答えてしまう。それを見て、奎吾は思い切り嫌そうな顔になった。そのまま人気のない路地へと連れ込まれる。蒲生・・・・・・と言い掛けた口を、キスで塞がれた。 「ふぅ・・・・・・あんっ!」

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