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第3話

「あ、あ」  声、甘い声、ミルクチョコレートみたいな声。  掌に触れる肌は、白くて滑らかで、気持ちが良い。身体が跳ねる度に、高い声が上がる。僕の好きな声だ。それを僕が出させているんだと思うと、それだけで、気分が高揚して達してしまいそうになる。  なんて、至福。僕の神様が、僕の下で喘いでいる。僕の手で気持ちよくなってくれている。暖かい。ちゃんと体温がある。神様は、ここにいる。  僕は、せっせと彼の奉仕をする。  彼の弱いところを責め立てて、声を出させる。   「いや、ぁ、もう」  逃げようとする神様の細腰を抱え込み、きれいな色の陰茎を口に含む。  フェラなんて、よくやる気になるなと思っていたけど、あれだ。全然、できる。むしろ、やりたい。もっと反応してもらいたい。イかせたい。   「や、やめ」  さあ、もう少しだ。  震える腰を更に強く抱きしめた。  思い切り、吸い上げる。 「ああっ」  一際高い声を上げて、神様は極めてしまったようだ。  その甘く濃厚な蜜を一滴たりとも逃すものかと、何度も舐めあげる。その度に、神様は泣きながら、もうやめてと懇願してきた。  ああ、不敵で不遜な僕を、どうかお許し下さい。 「ひっく、ひどい」 「ああ、ごめん。ごめんね」  艶やかな黒髪を撫でる。 「柊くん」  ピピピピピピピピ。  情緒のない電子音に目を覚ます。  大きく息を吐き、そうっと布団をめくる。  夢精って、え、この歳になってもするものなの。そりゃあ、ここ最近、なかなか処理する時間もなかったけど、え。  しかも、夢の内容、ががが。 *** 「僕は汚い」 「どうしました?」 「僕は、神を汚してしまった」 「また、柊くんですか」 「っ、なんて、僕は罪深いんだ!」  あの夢以来、柊くんの声を聞いただけで勃つようになってしまった。もはや、まともに、顔が見れない状態だ。や、顔は隠れているんだけど、下手に鎖骨とか見えるような服装されてると、もう歌を堪能するどころじゃない。  恋なんて呼ぶには、僕はもういい大人だし、凶暴すぎる感情だ。  神様に触れたい。  神様を汚したい。 汚して、僕のものにしたい。  声、あの声が、僕の名前を呼んで、僕の手で鳴いてくれたなら、どんなに幸せだろう。 「うっ、」  歌っている楓くんの顔に白濁液をぶっかけてしまった。  幸い、キーボードにはかかっていないようだが、いや、そういう問題じゃない。  まずい。これはまずいぞ。  汚れた画面を丁寧にティッシュで拭き、深々頭を下げた後、閉じる。  メールボックスに、握手会の当選通知が届いていた。  嬉しい。  嬉しいんだけど、声だけでこれなのに、実際に会ったらどうなるんだろう。僕、警察に捕まらないだろうか。  好き。  じゃなくて、どうしよう。

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