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第5話
俺は、Ωだ。
ただでさえ疎まれる存在な上に、なかなかの家柄で生まれてしまった自分。
いつかお父さんとお母さんが振り向いてくれるように、勉強だって運動だって人一倍がんばった。
少しでも触れられたら、見られたら、名前を呼んでもらえたら、嬉しかった。
でも、両親に必要なのはこなつだけ。
俺の方が何倍も優秀なのに。
努力だってしてる。
ただ、αかΩかというだけで、こんなにも差が開くのか。
何もしていないのに、俺が欲しくてたまらないものを手に入れたこなつのことが、憎くて憎くて仕方なかった。
今はもう、なんとも思ってないけど。
「それで、お兄ちゃんも実行委員になってくれたらいいなぁって」
は?って声がでそうになった。
なんで、お父さん達は俺がいる学校との合同文化祭なんてこと許可してるんだ?
もし気づいたなら、すぐに辞めさせるだろうに。
そこまで考えて、ふっと頭が冷えた。
俺が行ってる高校の名前なんて、知っているわけがない。
悩んだけれど、別に断ることもないかと了承した。
クラスで実行委員が俺に決まるのはあっという間だった。
すでに、こなつが委員長をやるというのは広まっていたから。
この学校にいる程々の家柄の生徒は、変に関わって火傷しない方がいいと考えたのだろう。
ぼっちな俺が手を挙げると、不思議そうに見られた。
まぁ、そんなのどうでもいい。
「先輩〜早く帰りましょ〜」
教室のドアを開けると、お腹にとすっと衝撃が入る。
この学校で、唯一気軽に話せる相手だ。
それは、同じΩだからということだけじゃない。
「さき……。どーしたの、なんか嫌なことあった?」
「よく分かりますね……文化祭の委員になっちゃったんですよ〜。嫌だ〜」
ぎゅーっと俺にしがみついたまま、泣き真似まで始めたさきの肩をぽんぽん叩く。
「俺もだよ?そんなに嫌?」
「え?先輩も!?」
「うん」
暗かった表情が、ぱっと明るくなった。
「やったー!ならいいです!一緒に頑張りましょうね!!」
あ〜、可愛い…
帰り道を歩き始めても、さきはずっとテンションが高い。
「そういえば知ってます?あのこなつ様が委員長やるっていうの」
なんか、弟が様付けで呼ばれているのは変な感じだ。
それに、さきがその存在を口に出すのも。
「知ってるよ。すっごい噂になってたから」
「あ〜怖い〜。なんか、気が合わない人はポイされるって、委員決める時に皆言ってたんですよ!?」
こなつは優しい子だし、そんな事したことないと思うけど……
「大丈夫、大丈夫。俺がさきを守るよ」
「ふわぁ!サラッと言わないでくださいよー!照れるー!!」
さきは両手でほっぺたをつつんで悶えてる。
「もう。さきが照れると、俺まで恥ずかしくなるじゃん」
少し赤くなった頬をさきに見られないように、足早に帰路を進んだ。
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