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第6話

「それでは、今から明章高校と白陵高校の合同会議を始めます」 明章高校は白陵高校の学院系列だから、委員長はそのまま俺になった。 そんなことより。 嬉しいのは、お兄ちゃんの姿があること。 でも最上級生のはずなのになぜか机の1番端っこで、顔をふせている。 そして、1年の後輩だろう人が、横から心配そうに見ている。 お兄ちゃんと、何かぼそぼそ話してるみたいだし。 どうしたのか気になる。 それに、なんでそんなに近い距離で話してるの? 何かあったら、無理やり聞こう。 「それでは、会議を終わります。これから、パンフレットを作るので、各校から2人ずつ残ってください」 一息つくと、壮絶な争いがすでに始まりかけていた。 「俺が指名しますので、落ち着いて!我が校からは俺と……春嶺。明章高校からは、先輩方お二人が残ってください。」 春嶺は俺と同学年。 それだけで選んだのだけど、花が咲いたような笑顔をしていた。 「こなつ様!僕、パソコン得意なんです!下書きに沿って作っていっていいですか?」 「ああ、ありがとう」 じゃあ、レイアウトは春嶺ともう1人に任せよう。 「俺と先輩で、紙取ってくる」 俺はお兄ちゃんの手首をがっしり掴んで、会議室の外に出た。 「お兄ちゃん!久しぶり!」 「こなつっ。そんなに大きな声で言わないで。学校では呼ばないって約束したでしょ?」 「意味わかんない」 俺は、お兄ちゃんに会えて嬉しいのに。 お兄ちゃんはなんでか困ってるみたいだ。 「それとね。俺のことは、藤崎って呼んで」 「なんで?もっと意味わかんない!」 「家の名前を知られたくないの。お願いだから、お兄ちゃんを困らせないで?」 家の大きすぎる名前がうっとおしいのは、俺が1番知っている。 だから、眉尻を下げてうつむくお兄ちゃんに、うんとしか言えなかった。 掴んだ手首はそのままで、資材の置いてある部屋へと向かう。 「結構広いんだね」 「ちょっとごちゃごちゃしてるけど。紙はあっち!」 いろんな種類と大きさの紙から、パンフレット用のツルツルした紙を選ぶ。 「これでいいかな?」 「うん!……あ、でももうちょっと他のも見ない?」 「そう?」 できるだけ長い間、お兄ちゃんと一緒にいたくて何度もこの時間をひきのばす。 それはお兄ちゃんも分かっているのか、苦笑しながら、一緒にいてくれる。 でも、そろそろ戻らないと。 「お兄ちゃ……藤崎先輩そろそろ戻りましょうか」 「っ。……うん、そうだね」 1番無難な紙を選んで、お兄ちゃんを呼ぶ。 呼び方を変えると悲しそうな顔をされて、少し気まずくなってしまった。

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