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第7話
「紙、とってきたけど、そっちはどう?」
「できました!あとは、印刷するだけです!」
「はやいな、助かる」
たったこれだけの言葉で、春嶺はこんなにも喜ぶ。
これは、ほとんどの奴らでも同じなのだろう。
俺にはなんの力もないのに。
刷り始めた春嶺を一瞥して、気になっていたもう1人の先輩に目を向ける。
壁際に1人でそっと立っていて、距離をはかりかねているようだ。
「小向先輩……ですよね?パンフレット、ホッチキスで止めるの手伝っていただけますか?藤崎先輩も一緒に」
「え!?は、はい。もちろんです」
わたわたと慌てる小向先輩とこくっと頷くお兄ちゃんと共に、作業を始めた。
「この3枚を順に重ねて、真ん中を2箇所止めてもらえればいいです」
まったく会話のない作業で、雰囲気がどんどん重たくなってきた。
「こなつ様!全部刷り終わりました!」
「ああ、ありがとう。じゃあ、こっち手伝ってくれるか」
「はい!」
明るい春嶺のおかげで気まずさもだいぶ軽減された。
基本、春嶺が俺に質問して答えるという形だけど。
やっと終わった時、すでに日が暮れていた。
「長い時間ありがとうございました。それでは、解散してください。藤崎先輩は、もう少しだけ残っていただけますか?」
「あ……、はい」
春嶺と小向先輩が出ていった後、大きくため息をついた。
「やっぱり呼び方違うと変な感じする……。でも、こんなに落ち着いてお兄ちゃんに会えるの嬉しい!」
「俺もだよ」
ああ〜なんか嬉しいなぁ。
「でも、もう帰らないと。ほら、支度して」
「はーい」
散らかしてしまってた筆記用具を、お兄ちゃんが集めてくれる。
お兄ちゃんは、いつも整理整頓できてるから、やることは無いみたい。
ぱぱっと片付けて、一緒に学校をでた。
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