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第9話

こなつと歩いている時、校門にもたれて眠っているさきを見つけた。 俺を待ってて、ここで寝てたのか……? かわいい…… けど、ちゃんと怒らないと。 起こさないようにそっと持ち上げると、こなつが息を切らして俺の前に立った。 αはどんなものに対しても独占欲が強い。 こなつは俺に執着しているから、特にだろう。 起きないでくれと願う間もなく、さきは目を覚ました。 「あっ、先輩!お疲れ様です!って抱っこされてる!?え!?こなつ様!?」 「さーき、落ち着いて。待っててくれたの?ありがとね」 早く帰ろうと言おうとした時、ぶわっとαのフェロモンが放たれた。 俺でさえ意識を持っていかれそうなそれに、訓練を受けていないさきが耐えれるわけがない。 どんどん熱くなる身体を抱きしめながら、ポケットを探って薬を飲ませる。 「さき、大丈夫だからね。目を瞑って、深呼吸して」 こなつに逃げるように大声で叫ぶと、俺も反対方向に急いで走りだした。 初めて来る寂れた公園にたどり着き、ベンチにさきを寝かせた。 だいたい30分で聞き始めるから、あと10分くらいか。 スポーツドリンクを買って、さきに飲ませる。 「せんぱい〜」 しゃくりあげながら、俺にしがみつくさきをなで続ける。 ただでさえ、不安定になる発情期を強制的に引き起こされたのだから、しんどさは半端じゃないだろう。 後先考えずに行動するこなつに、Ωと知らなかったこなつのせいではないと思いながらも苛立った。 やっと落ちついたさきはまだ、グズグズと泣いている。 「ほぉら、落ち着いて。怖かったね。よく頑張ったよ」 「先輩……ごめんなさい。僕があんなとこにいたから」 「ううん。それは嬉しかったよ。でも、危ないからもうしちゃだめ」 「はい……」 これから、どうしようか。 突発的なものだから、長くは続かないだろうけど。 不安定な状態で、さきを家には帰せない。 迷惑がられるのは目に見えている。 「そうだ。今日は一緒にどこかに泊まらない?」 「いいんですか……?」 さきもどうするか悩んでいたようだ。 そもそも、こなつをあんなふうにさせたのは俺な訳だし。 それだけでなく、さきを守るって約束したから。 「ここの近くに、温泉があるんだけど。学校からもそんなに離れてないし、そこにしていい?」 温泉なら、癒されるだろうか。 はやくいつもみたいに元気になってほしい。

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