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第10話
翌日の放課後、俺は明章高校の校門前に立っていた。
迎えに来た車から逃げたから、帰ったらだいぶ怒られるだろうけど……
生徒達がざわざわし始めた時、やっとお兄ちゃんと昨日のΩ、和田が出てきた。
「おにっ……藤崎先輩!」
近寄ると、和田はひっと小さく声を上げ、お兄ちゃんが背中に隠した。
「どうしたの?」
いつもより冷たいようなお兄ちゃんに、怖さを感じながら話し続ける。
「謝りたくて……和田、ごめん。俺のせいで昨日は大変だっただろ」
「い、いえ。全然…大丈夫でした」
異常に俺を怖がる姿に大丈夫なわけないだろと言いたくなる。
αの力は強烈だと、身をもって体感した。
「これ、よかったら食べてくれないか?」
執事に頼むのは何か違うと思って、自分で買いに行ったお菓子。
和田のことを何一つ知らないから、気に入るかは分からないけど。
「あっ……わざわざ、すみません」
「さき、無理しなくていいからね。ごめん、まだこの子、調子悪いみたいだから、もういいかな?」
「……うん、ほんとにごめんなさい」
お兄ちゃんはひとつため息をついて、俺の頭をわしゃわしゃ撫でた。
「もう……迎えから逃げてきたんでしょ?俺がお母さんに言っとくから、どこかで時間潰して帰っておいで?」
いつも通りの優しいお兄ちゃんにもどった……
最後にもう1回謝って、言われたとおりにカフェで時間を潰してから帰った。
お兄ちゃんは、上手に誤魔化してくれたみたいで、家に着いても母さんは何も言ってこなかった。
昨日から……
俺が知らないお兄ちゃんばっかり見てる気がする。
俺はお兄ちゃんが大好きだから、お兄ちゃんも俺を好きだってなんの根拠もなく信じてたけど。
お兄ちゃんの1番は、多分和田だ。
俺とお兄ちゃんは兄弟で、αの男同士。
でも、正々堂々お兄ちゃんをおとしたい。
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