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第11話

「おにっ……藤崎先輩!」 いつも通りさきと帰ろうとしていると、こなつの声が聞こえた。 びっくりして見渡すと、走ってきたのか汗ばんだこなつが立っていた。 最悪の場合、またさきが発情期に入る可能性がある。 怖がっているさきをそっと背中に隠した。 「どうしたの?」 こなつと、誰かが見ているところで話すなんて慣れていなくて、硬くなってしまう。 「謝りたくて……和田、ごめん。俺のせいで昨日は大変だっただろ」 「い、いえ。全然…大丈夫でした」 走ってまで、わざわざ謝りに来たのか。 こなつは俺がΩだとは知らないから、初めて見るΩと発情期によほど驚いたのだろう。 さきはまだ、怖いようだけど、こなつの態度が昨日とは違うからか、落ち着いてきた。 「さき、無理しなくていいからね。ごめん、まだこの子、調子悪いみたいだから、もういいかな?」 「……うん、ほんとにごめんなさい」 こなつは優しい子だ。 それはちゃんと分かってる。 しゅんとする姿がなんだか可愛らしくて、つい頭を撫でてしまった。 「もう……迎えから逃げてきたんでしょ?俺がお母さんに言っとくから、どこかで時間潰して帰っておいで?」 「さ、さき先輩!こなつ様とどういう関係なんですか!?普通に話してたし……」 こなつが場を離れてから、焦ったようにさきが話しかける。 周りも興味津々のようで、聞き耳を立てているのが分かるから、一旦学校から離れることにした。 「絶対、誰にも言っちゃだめだよ?こなつは俺の弟。ほんとに……弟が迷惑かけて悪かったね」 帰り道、人通りのない路地でそっと話しかけると、案の定さきはえー!っと大きな声を出した。 「じゃあ、先輩も!御曹司じゃないですか!?なんで、嘘ついてるんです!?…………あっ…」 「ふふ、そう。Ωだからね。両親が隠したがってるの」 気まずそうな顔をしたさきの背中をぽんぽん叩く。 家に迷惑がられてるのは、さきも一緒だ。 「こなつ様のこと……嫌じゃないんですか?僕は一人っ子だから、まだいいですけど。αの妹か弟なんてできたら発狂しそう」 「こなつは何も悪くないからね。いい子なんだよ、本当に。さきも……怖かっただろうけど、嫌いにならないでほしいな」 「……先輩がいいなら、僕もいいです。でも、しんどくなったら相談して欲しいなぁなんて………うわぁっ」 尊い存在をむぎゅうと抱きしめる。 可愛くて可愛くて、それだけじゃなくて強くて優しい。 「さきがいてくれるだけで、俺は幸せだよ」 あぁ……俺がαだったら良かったのに。

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