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第19話
文化祭も終盤。
明日は、見回りの当番だから楽しめる文化祭はこれで最後。
少しずつ、売り切れの看板を持ち上げるクラスが増える中、俺とお兄ちゃんは、最初に座った外にあるベンチで休んでいた。
「お兄ちゃん、疲れた顔してる……」
「…そう?そんなことないけど」
お兄ちゃんといれるのが嬉しくて、振り回してしまったのかもしない。
人が多いところは苦手そうだし。
「ほんとにだいじょう……って!あっつ!」
おでこに手をあてた瞬間、振り払われる。
「お兄ちゃん!すごい熱!保健室いこ!!」
大丈夫だからと言うお兄ちゃんを無視して、抱き上げる。
その瞬間___
お兄ちゃんの身体がビクッと震えて……
ズボンに染みが広がった。
漂う甘い匂いと、苦しそうで甘い吐息。
「まさか………」
Ω……………?
やばいやばいやばい。
今すぐに襲いかかりたくなるほどの、強烈な匂い。
ここは校舎の外とはいえ、敷地内。
いつ人が通ってもおかしくない。
お兄ちゃんを抱えたまま、二の腕をがぶりと噛んだ。
ツゥーと流れる血と比例するように、理性が戻ってくる。
1番近い空き教室に駆け込み、後ろ手に鍵を閉めた。
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