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第25話

こんなにも後悔したのは初めてだ。 家に帰り、お兄ちゃんの部屋を訪れると、すでにそこにはなにもなかった。 以前、同じようなことがあったときと、似たようにうまくいくと思っていた。 引き留められる声を無視して、家を飛び出し一生懸命探してもお兄ちゃんはいなかった。 自分の部屋にとぼとぼと帰った後、父さんから呼び出しをくらった。 父さんと会うのは久しぶりだ。 いつも、忙しそうにしていたから。 そもそも、仕事のこと以外で呼ばれたのは初めてかもしれない。 「父さん。入るよ」 返事を待たずに、さっさと部屋に入る。 少々苛立っているから仕方ない。 「要件はひとつだ。もう、兄のことは忘れなさい」 「なんで行かせた?」 「あいつはお前の数倍、優秀だ。しかし、Ωだった。それだけで不利になる状況は、お前が思う以上に多い」 それくらい分かってる。 でも、だからって忘れることなんてできない。 何を言っても意味のなさそうな父さんを無視して、部屋に戻った。

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