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第26話

両親の金には頼りたくなくて、住み込みのバイトに応募した。 少し寂れた田舎のカフェ。 夜はバーになるらしい。 家からは少し近いけど、灯台下暗しというし、大丈夫だろう。 「すみません……バイトに応募した…」 「あぁ、こんにちは。道に迷いませんでしたか?」 優しそうな男の人だ。 今日はカフェは休みらしく、店内のテーブルに腰掛けた。 「これ、履歴書です」 「ありがとうございます。白鳥 せ……っ、坊ちゃん……?」 坊ちゃん、、? 昔、家で呼ばれていた名前。 ただ、そう呼んでいたのは一人だけだ。 「黒川さん、、」 「大きくなられましたね……でも、ここに来たということは、」 「いえ、これは俺が決めたことです。 それより、すみませんでした。黒川さんが執事を辞めたのは、俺のせいでしょう?」 「いえ、そんなことありません。坊ちゃんを一人であそこに残してきたのは心残りでしたが」 昔と変わらず、黒川さんは優しい。 俺にかまったら、自分に不利になると知っていただろうに。 「坊ちゃん、ぜひここに居てください。差し出がましいですが、昔救えなかったあなたを守りたい」 「……甘えても、いいですか」 「もちろん」 もしかしたら、俺がいることでまた迷惑がかかるかもしれない。 多分、俺はここにいるべきじゃない。 でも、この温かい手を自分から離すなんて、弱い俺には出来なかった。 俯いた俺を慰めるためか、黒川さんは頭を撫でてくれた。 幼い頃にもよくしてくれたことを思い出し、涙腺が緩む。 「坊ちゃん?……ふふ、我慢しなくてもいいですよ。泣く時は、いつでも傍にいさせてください」 「ありがとう、っございます… 」

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