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第31話

「せつなくん、お客さんが来たのでさっき焼いてたケーキ、出してくれますか?」 キッチンで新しいケーキを試していた俺は苦笑いを零した。 また萩花が強引に連れ込んだのだろう。 俺とは違って、社交的な子だ。 萩花とお客さん、そして黒川さんの分を切り分けて、紅茶と共に運んだ。 「うわぁ!シフォンケーキー!!俺、これ好き!」 「ふふ、よかった。でも、ご飯食べれなくなるからちょっとだけね」 ケーキを全て配り終わったあと、ぱしっと腕を掴まれた。 「……え?」 「お兄ちゃん……?」 時が固まったようだった。 記憶の彼方に置いてきたこなつの記憶が次々と蘇ってくる。 なんで、こんな所にいるんだよ。 もう、関わってはいけない。 俺は邪魔なんだから。 「……誰です?まだ、片付けが残ってるので失礼します」 そう言っても、まだ腕は掴まれたままだ。 「お兄ちゃんだよね。お願い、ちょっとだけでもいいから話したい」 「……話すことなんて、ありませんが」 「せつなくん、困っていませんか……?」 困ってるというか… どう対処していいか分からない。 「お願い!少しだけ!」 手をぎゅっと握られ、見つめられる。 「いや……」 「それなら、萩花くんと三人でお話しては?」 「そ、それなら……」 二人じゃないなら変な空気になることは無いか。 頑固そうなこなつの顔を見て、渋々了承した。

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