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第32話

「ねぇ!お兄さん誰なのー?」 「白波 こなつだよ。よろしくね」 「俺はー、萩花!お兄さんは、パパのことなんで知ってるのー?」 空気をぶち破ってくれた萩花は、正直ありがたかったけど、その質問はちょっと…… それに、パパって普通に呼んじゃったし。 「えーと……」 こなつは、俺の方をちらっと見てくる。 兄弟と言っていいのか、悩んでいるんだろう。 「その人はパパの弟。萩花のおじさんだよ」 「おじさんー?」 それに、父親という関係も付け足せるけど。 それは、絶対言ったらダメなやつだ。 「お兄ちゃん、もしかしてあの人と……」 やっぱり、聞くよなぁ。 「こなつには関係ない」 「っ、」 そう思っていてくれた方が有難い。 黒川さんには申し訳ないけど、そういう事にしておこう。 「それより、こなつはどうなの?結婚とかは?」 俺が今23歳だから、こなつは22歳。 そろそろお見合いが始まってもおかしくない。 「そんなの、いないよ。俺が好きなのは、ずっと」 やばい、と思った。 「お兄ちゃんだけだから」 はぁと大きくため息をつく。 「こなつ、もういいかな?俺、仕事に戻ってきたいんだけど」 「パパ、今日お仕事ないじゃん。ケーキ作ってるだけじゃん」 急に口挟んできたと思ったら、余計なこと言いやがって。 ぐりぐりと萩花の頭を撫でる。 「とりあえず。俺は作ってくるから、こなつはもう帰って。それから、ここにはもう来ないで。俺は幸せだから」 立ち上がった俺の腕は、またしてもこなつに掴まれる。 「客としてなら……いいでしょ?」 「はぁ……。好きにすれば?でも、俺は二度と話さないからね」 「ねぇ、パパ〜。俺、お兄さんと遊んできていいー?」 また、萩花は…… 「だーめ。迷惑でしょ」 「全然迷惑じゃないよ。萩花くん、遊ぼうか」 こなつは嬉しそうに笑い、萩花の手を取った。 近所の公園に行ってくるという二人を見送ったあと、黒川さんが近づいてきた。 「こなつ様、ですよね。よろしいのですか」 「大丈夫……それより、多分黒川さんが萩花の父親だと思ってるみたいなので……」 「分かりました。こなつ様は私のことを覚えていないようですので、大丈夫でしょう」 「萩花は、やっぱり父親が欲しいのかな……」 「……それは、彼にしか分かりません。ただ、貴方が辛い思いをするのはいやがるでしょうね」

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