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第33話

お兄ちゃんを探し始めて、六年。 父さんが妨害しているせいか、お兄ちゃんはなかなか見つからなかった。 今回もまたかと落胆して、ぐったりとしている時、小さい男の子に声をかけられた。 「お客さん!こんにちは!」 「…?こんにちは」 お客さん……? ふと後ろを見ると、カフェのドア。 悪いところで休んでしまったな。 「あのねぇ、今日はお休みなの!明日はやってるよー?」 「そっか、残念。じゃあ、また来るよ」 いい匂いもするし、またお兄ちゃんを探しに来た時にでも来てみよう。 「んー、でも入っていいよ!今日はパパがケーキ焼いてるから!」 「いや、迷惑だろうから…」 「萩花くん、そろそろ中に……、あぁ、萩花くんと話してくれてたんですね」 「ねぇ、一緒にケーキ食べていー?」 「もちろんですよ。さぁ、どうぞ」 なんだかとんとん拍子に話が進んで、店の中に入った。 「せつなくん、お客さんが来たのでさっき焼いてたケーキ、出してくれますか?」 「せ…つな……?」 「、?えぇ、お菓子系を担当してもらってるんですよ」 ケーキを持ってきた、お兄ちゃん…… 会ったら話そうと思っていた全てのことが、抜け落ちてしまったみたいだった。 「うわぁ!シフォンケーキー!!俺、これ好き!」 「ふふ、よかった。でも、ご飯食べれなくなるからちょっとだけね」 反射で腕を掴む。 「……え?」 「お兄ちゃん……?」 「……誰です?まだ、片付けが残ってるので失礼します」 今を逃したら、絶対に後悔する。 逃げてもう会ってくれないかもしれない。 「お兄ちゃんだよね。お願い、ちょっとだけでもいいから話したい」 「……話すことなんて、ありませんが」 「せつなくん、困っていませんか……?」 「お願い!少しだけ!」 手をぎゅっと握り、目を見つめる。 「いや……」 「それなら、萩花くんと三人でお話しては?」 「そ、それなら……」

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