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第34話

________ 「こなつはもう帰って。それから、ここにはもう来ないで。俺は幸せだから」 席を立つお兄ちゃんの腕を鷲掴む。 「客としてなら……いいでしょ?」 「はぁ……。好きにすれば?でも、俺は二度と話さないからね」 居場所さえ分からなかった時よりは、全然ましだ。 だって、お兄ちゃんに会うことができるんだから。 「ねぇ、パパ〜。俺、お兄さんと遊んできていいー?」 萩花くんが、急に俺を見つめてくる。 「だーめ。迷惑でしょ」 「全然迷惑じゃないよ。萩花くん、遊ぼうか」 萩花くんに連れられて、近くの公園に向かった。 「萩花くん、何して遊ぶの?」 「お兄さんは、なんでパパのこと好きなの?」 「え?」 これくらいの年齢の子ってこういう恋愛の話が好きなのか? 「……あのね、昔から萩花くんのパパだけが、俺に本気で接してくれたんだよ。 何しても怒られなかった俺に……初めて怒ってくれたし。ダメなところは言ってくれた。頑張ったら、すっごく褒めてくれた。 正直、俺は苦手に思われてるだろうけど、お兄ちゃんを諦められないなぁ」 「……。パパはお兄さんのこと、苦手みたいだね」 萩花くんに見つめられてどきっとする。 この子は、αか。 オーナーは多分βだったから、すごい確率で生まれたことになる。 「萩花くんのお父さんは……、ほんとにさっきの……?」 お兄ちゃんは、そうだとははっきり言ってなかった。 「それを、俺に聞くのはルール違反じゃない?」 「……そうだね。ごめん」 俺の子ではないのかという期待が、ほんのりと胸のどこかに生まれた。 でも、確かに萩花くんに聞くのはずるい。 随分、大人びている子だ。 「ねぇ!俺、ぶらんこで遊びたいなぁ。お兄さん、押して〜」 「あ、あぁ。うん」 そこからは、萩花くんはまるで何も考えていない子供のようになった。 無邪気に遊んで、笑って。 さっきのはなんだったんだろうか…… 「萩花くん、そろそろ帰ろっか。」 「え〜!もうちょっと遊びたい!」 「でも、暗くなってるし、パパも心配するよ?」 「……はーい」 その不服そうな顔は、演技なのか…… 「ただいまー!」 「おかえりなさい。遊んでいただき、ありがとうございました」 「いえ…」 対応してくれたのはオーナーで、ちらっと中を見てお兄ちゃんを探す。 「せつなくんはあなたに会うことを、好まないようで…。ただ、あまり焦らないであげてください」 「は、はい。」 この人は俺の恋敵かもしれない。 でも、お兄ちゃんをとても大事に思ってるのは伝わるから。 お兄ちゃんがここにいて、良かったと思った。

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