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第35話

こなつが帰り夜ご飯を食べたあと、萩花が俺の部屋にやってきた。 「パパ〜。今日は一緒に寝よ?」 「どうしたの?珍しいね」 「だって、お兄さんが帰って寂しいんでしょ?あの人、俺のお父さんだよね」 笑顔でいうそれに、びっくりして声が出ない。 まさか、黒川さんとの会話を聞いてた? いや、遊びに行ってたはず。 「違うよー……?…な、なんで?」 「匂いが俺と一緒だったから。大丈夫、お兄さんには言ってないよ」 匂いというのはフェロモンのことだろうか。 小さい子は敏感なのかもしれない。 それに、言ってないよって…… 気を使わせてしまってる。 「はは……萩花は、お父さん欲しい?」 「パパがいれば、どっちでもいい。なんでいないのかなぁって思ってたけど」 俺のベッドに潜り込んできた萩花を、ぎゅうっと抱きしめる。 「パパが弱いせいで、ごめんね。でも、萩花が寂しくないように頑張るから!」 「別に寂しくないよ。寂しいのはパパでしょ…?」 息子に心配かけるようじゃだめだなぁ…… でも、確かに今日はこなつに会ったことで、お父さんとお母さんを思い出して寂しくなった。 こなつが帰ってしまったこともその要因。 俺が避けてるくせに。 「パパは頑張りすぎだから、甘やかしてくれる人がいた方がいいと思うけどなぁ?じゃあ、おやすみ!」 「うん、おやすみ」 今でも、充分甘やかしてもらってるんだけど…… 萩花がちょっと大人びてきたみたいで嬉しいなぁ。 子供ながらの高い体温に包まれて、眠りについた。

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