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第36話

「こんにちは〜」 「お兄さんだー。また来たのー?」 この店には、週に三回は来ている。 萩花くんには、呆れられている気がする。 「あぁこなつくん、いらっしゃい。コーヒーとサンドイッチでいいですか?」 「えぇ。お願いします」 お兄ちゃんは、ずっと料理を作っているらしく、半年通っても姿をたまに見られるくらいだ。 今日は見れたらいいなぁ。 ここに来ると毎回頼んでいるコーヒーとサンドイッチを食べ終えると、萩花くんが近づいてくる。 「あのね、今パパが熱出してるの。言っちゃダメって言われてたけど、特別ね」 「えっ?大丈夫なの?」 「見にいけば?そこの階段上がってすぐの部屋だから。あっ、発情期じゃないからね」 それだけ言うと、萩花くんはどこかに行ってしまった。 発情期とか、もう理解してるのか…… どうしよう。 居住スペースに勝手に入ってもいいものだろうか。 「こなつくん、せつなくんにはちみつレモン持っていってくれませんか?」 悩んでいるのが分かったのか、黒川さんにマグカップを渡された。 「あ……、ありがとうございます。」 よしっと覚悟を決めて、階段に向かった。 「お兄ちゃん?入るよ」 ノックしても返事がなかったので、勝手に入ることにした。 部屋の雰囲気は、昔とあんまり変わっていない。 ほとんど物がなく、きれいだ。 そしてベッドには、うなされるお兄ちゃんの姿があった。 顔は真っ青で、変な汗もかいている。 「お兄ちゃん!起きて?」 「っは、はぁっ!?黒川さ、、、え……こ、こなつ?」 「大丈夫……?」 「こ、ここ、俺の部屋なんだけど。何しに来たの」 目的を思い出し、はいっとマグカップを手渡す。 「あ…ありがと」 「すごく魘されてたけど…」 お兄ちゃんにはまだ、汗が浮かんでいる。 ハンカチを出して、そっとそれを拭った。 少し掠ったおでこは、とても熱い。 「ちょっと嫌な夢見ただけ。こなつはもう出てって」 「いやだ。せめて、お兄ちゃんがもう一回寝るまで居させて」 お兄ちゃんは、呆れたような顔をしながら、ありがとと呟いた。

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