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第37話
「あなたがいなければ!産まなきゃよかった!」
あぁ、これは夢だ。
昔の、夢。
昔のトラウマが、消えていないらしい。
毎回決まってこの夢を見るのだ。
お母さんが叫んで、俺を殴った。蹴った。
産まれなければお母さんは悲しくなかったのかなんて考えながら、でも、お母さんに会えたことが嬉しかった。
今なら分かる。
名家に嫁いで、Ωを産んでしまったお母さんの気持ち。
父方の親戚に色々言われたんだろう。
Ωなんかを産んでどういうつもりだ、とか。
だから、お母さんは悪くない。
悪いのは産まれてきた自分、αになれなかった自分、お母さんの自慢になれなかった自分。
「どこかに行って!!」
また、蹴られた。
夢のはずなのにやけに痛い。
ただ、ごめんなさいと繰り返すことしか俺にはできない。
あ、場面が変わった。
こなつだ、こなつが頭を撫でられている。
お母さん、俺もがんばったんだよ。
模試は一位をキープしたし、ピアノで新しい曲が弾ける、水泳で全国大会にでることになった。
撫でて欲しいなんて言えないけど、1回だけでもがんばったねって言って欲しかった。
憎い。
こなつが、αが、Ωが、この世界を作ったやつが。
俺を望む者が誰一人いないなら、俺が死んだって世界は変わらないのに。
なんで、俺は死ねないんだろ。
蹴られて、殴られて、蔑まれて。
俺の存在意義ってそれらをされることなんだろうか。
「お兄ちゃん!起きて?」
夢と現実が、区別できなくなってきたところで、起こされる。
助かった。
「っは、はぁっ!?黒川さ、、、」
ん……?お兄ちゃん…………?
「こ、こなつ?」
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