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第38話

「大丈夫……?」 「こ、ここ、俺の部屋なんだけど。何しに来たの」 こなつは思い出したように、はちみつレモンが入っているだろうマグカップを、俺に渡した。 俺が好きだと言ってから、熱を出すと黒川さんが毎回作ってくれるものだ。 「あ…ありがと」 「すごく魘されてたけど…」 そんなに心配した顔しないでよ。 俺はこなつのことが大っ嫌いだったはずなのに。 汗を拭ってくれる優しい手に安心感をおぼえてしまう。 「ちょっと嫌な夢見ただけ。こなつはもう出てって」 「いやだ。せめて、お兄ちゃんがもう一回寝るまで居させて」 だめだってもっときつく言わないといけないんだろうけど。 今は、この優しさをそばに感じていたかった。 久しぶりになんの夢も見ずに、ぐっすり眠れた。 ふと暖かい右手を見ると、そこはこなつと繋がっていた。 こなつは、俺のベッドに突っ伏して寝ている。 繋いでいない手を伸ばして、そっとこなつの髪を撫でた。 ふわふわで柔らかい。 少しは大人になったかな?と思ったけど、寝顔は子供の頃のまんまで、何故か安心した。 「ん、んぅ……おはよぅ、おにーちゃん…」 「おはよう。もう夜だけどね」 もうカフェは閉まって、バーが始まっている時間。 「熱、下がったみたいだね。よかった」 そっとおでこに手を当てられ、微笑まれる。 握ってた手を離されたのが悲しかった、なんて。 「外は暗いし、早く帰りな。付き添ってくれてありがとね」 「うん、分かった。無理、しないでね」 最後まで心配そうにこちらを見るこなつに笑ってみせると、一度俺をぎゅっと抱きしめて部屋を出ていった。 「………へ?」 ぶわっと顔が熱くなった。 抱きしめられただけなのに…… こなつ、本当にかっこよくなったよなぁ。 お兄ちゃん目線で見ると、子供っぽいところはあるけれど。 身長が伸びたことや顔つきが男らしくなっただけじゃなくて、仕草がかっこいい。 はぁ…… Ωはやっぱり、αには敵わないのだろうか。

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