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第39話
次にこなつがやってきたのは、それから二週間後のことだった。
ここ二週間、俺は別になんとも思ってないのに、黒川さんや萩花、お客さんまでもがすぐに来るよとか励ましてきて、意味がわからなかった。
こなつが俺に飽きたなら飽きたで良かったのに。
「こなつくん、久しぶりですね。せつなくん、こなつくんが来ましたよ!」
黒川さんがテンションを上げて俺を呼ぶ。
「パパ、いかないの?」
萩花が、俺を促す。
「行く必要ないでしょ。カヌレの焼き上がりも見ないとだし」
「じゃあ、焼き上がるまで行ってきたら?あと、40分はあるし!」
萩花に背中をぐいぐい押されて、こなつの前に差し出される。
なんか、気まずい。
「お兄ちゃん、久しぶり。ごめんね、仕事がちょっと立て込んじゃって」
「いや……謝るような事じゃないでしょ?約束してるわけじゃないし」
「会えなくて寂しかった」
「そう……」
そんなにストレートに伝えられると照れてしまう。
そのせいで、俺の態度はどんどん素っ気なくなる。
「あのね、仕事が一区切りついたから、来月の半ばくらいに休みが取れそうなんだ。
それで、もし良かったら一緒に旅行とかいけないかな?ここの仕事があるのは分かってるし、日帰りでもいい。もちろん、萩花くんや黒川さんも一緒に」
「はぁ!?そんなの行けるわけないでしょ?」
例え日帰りでも、仕込みもしなきゃいけないし、無理だ。
いや、なんで行く前提で考えてるんだ。
「パパー、俺、行きたいなぁ?」
「うわっ、萩花、いつからいたの?」
「さっきからいたよー?パパ、お兄さんに集中しすぎ」
集中って……
何言ってんの…………
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