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6-寝てれば治るので

「ノンアノは可愛いよね」 「そうですね」 「ゴローくんはノンアノ飼ったことある?」 「ないです」 「そっか。ゴローくんはノンアノ好き?」 「好きでも嫌いでもないです」 「そっか。オレが飼うなら、そうだな……可愛くて、素直で、ちょっとドジでも一生懸命で、ずっとオレのことを愛してくれる子がいいな」 「……はい」 これまでずっと興味をもってオレの話を聞いてくれていたゴローくんなのに、随分と素っ気ない。 「オレ、もう少し一人で飲んでるから、先にお風呂入っておいで」 「はい」 ゴローくんでも、酔っ払いの相手は面倒なのかもしれない。 そう思って先に風呂に入るよう勧めたけれど、ひとりになれば飲み続ける気にもなれず、結局オレはテーブルの上を片付け始めた。 洗ったグラスを棚に戻そうとして足がふらつく。 やっぱりそれなりに酔っているらしい……。 「お風呂あがりました」 振り返ると湯上りパジャマのゴローくん。 今日も色っぽいな。 だけど、風呂上がりに体調を崩すことが多いから、少し心配だ。 心配だけど、酒の入ったオレの口は全然関係のないことを言う。 「ゴローくんいつもその髪型だけど、洗っても乾かしてすぐ編み込んでるんだよね。どうして?オレ、髪をほどいたところも見てみたい」 ふらりと歩み寄って頭に手を伸ばす。 「だ、ダメ!」 めずらしくゴローくんが嫌がった。 それが、酔ったオレの中の何かのスイッチを押してしまった。 「どうして嫌がるの?オレのこと嫌い?」 「え……嫌いじゃないです」 「じゃあ、好き?」 「す……?す……き…… です」 「はっきりしない言い方だな。本当は嫌いだけど、住まわせてくれているから仕方なく言うこときいてたりするんじゃない?」 「違います!ハクトさんは、親切で、やさしくて、色々丁寧に教えてくれるいいヒトです。僕はいつでもハクトさんの役に立ちたいです」 「本当に?」 「はい」 「じゃあ、今、オレの役に立ってくれる?」 「はい」 ゴローくんの顔が少しのぼせたように赤く染まっていた。 ちょっと気分が悪いのかもしれない。 それはわかっていた。 わかっていたけど、オレは酒に飲まれてしまっていた。 彼にあてがっている寝室へ足を踏み入れ手招きすれば、ゴローくんは疑問を挟むことなく部屋に入ってくる。 「そういえば、ここにきた最初のとき、ゴローくんはパンツはいてなかったよね。本当ははかない方が好きなんだろ?」 「それは、どっちでも」 酔っ払いのセクハラ発言にも生真面目に答えてくれる。 「じゃあ、どっちがいいかくらべてみよう」 「え?」 「パンツぬいで」 「え……はい」 ゴローくんは嫌がらずにパンツを脱いだ。 オレに世話になっているからって、こんな指示にまであっさり従ってしまうなんて、なんだかおかしな感じだ。 とはいえ、以前下着姿を見せた時と違い、かなり恥ずかしがっているように見える。 湯上りで外気にさらされたゴローくんのモノは、オレと大差ないサイズで、若々しく、ずいぶんとキレイだった。 しかも……。 「剃ってるの?」 「え……?」 オレの質問に答えることなく、フラリとかしいだゴローくんがベッドに崩れ落ちた。 顔が逆上せたように赤い。 オレは心配半分でベッドに上り、下心半分でゴローくんに覆いかぶさった。 「大丈夫?具合悪いの?」 「あ……寝てれば治るので、大丈夫です」 「そっか、よかった」 「……っっ」 ぎゅっと抱きしめると、大げさなくらいにゴローくんが体を跳ねさせた。 「今日は具合がよくなるまで、一緒にいてあげる」 「え……あ、ありがとうございます。でも、寝てれば治るので」 「オレと一緒にいるの、イヤ?」 「い……イヤじゃないです」 「そう……」 切れ長の黒い目をじっと見つめる。 やっぱり具合はよくないらしく、熱に浮かされたように少し焦点がぼけ、潤んでいる。でもそれはきっと酔ってるオレもおなじ。 「ゴローくん……」 吸い寄せられるように唇を近づけると、ゴローくんはパッと横を向いて避けた。 「ハクトさん、その、あまり近づくと、唇がくっついてしまいます」 「……そっか。ごめんね」 こんなにゆっくり近づいたのに、たまたま唇がふれそうになるなんてことあるわけないだろ? 「でも、唇がついちゃダメなの?」 「それは、ダメです。あのですね、お酒を飲むと色々失敗するヒトがいるらしいんです。ハクトさんはいまお酒を飲んでいます。それで唇同士をくっつけたら、明日の朝にハクトさんは後悔します」 ものすごく真面目な顔で説明してくれる。 「明日の朝、後悔か……それは嫌だなぁ」 「はい。後悔は嫌な気持ちになります」 「じゃあ、唇以外ならゴローくんにふれてもいいよね?」 「え……?……はっっ」 ちゅ……。 首筋にキスを一つすると、ゴローくんはビクンと体を縮こまらせ、オレの肩をがっちりと掴んだ。 もひとつ……ちゅ……。 「ふぅっ……!」 息を飲んで、ぎゅっと目をつむる。 耐えるようではあるけど、嫌がってはいない……と思う。 「唇じゃないから、いいんだよね?」 「わ……わかりませっ……んくっっ!」 鎖骨を軽く舐め上げ、チュッと吸うと、腕の下で細身だけどバランスよく筋肉のついた体が熱を増した。 味わうように引き締まった腰をなでれば、ビクンビクンと良い反応が返ってきて、オレの興奮も増す。 その手がゴローくんの下腹を通ると指先がぬるりと濡れた。 「ゴローくん、コレ」 「ふっっ……ううううう……」 湿りの源流をたどり、咲く直前の朝顔の蕾のようなゴローくんのモノを掴む。 「ねぇ、コレどうしたの?」 「わ……わかりません」 ただ掴んでいるだけなのに、手の中で期待の露に濡れたモノが一気に熱と硬さを増していく。 「自分の体なのに、わからないってことないだろ?」 「ぅ……くぅぅぅ………本当に、わかりません」 パジャマのシャツの中に手を差し込み、胸と腹のすべらかな感触を楽しむように大きくなであげる。 するとゴローくんは目を潤ませ、なまめかしく体をくねらせた。 「ぁひっっ……!」 手の中のモノも熱く震える。 ゴローくんはかなり敏感なタチらしい。 さらになで上げると、耐えきれないのか身をよじって少しづつベッドの端へと逃げ始めてしまった。 「ゴローくん、逃げないで」 「……う……うう……」 やさしく囁くと、逃げるのをやめてぎゅっと身を丸め、足をモジモジさせながらなで上げられる快感に耐えている。 それに気を良くして、少し固くなった胸の突起に指を絡め、首筋にキスを落とすと、ゴローくんはキュウと喉を鳴らしてベッドを転がり、とうとうオレの腕の中から逃げ出してしまった。 布団に半身を潜り込ませ、上目遣いでこちらをうかがうゴローくんはオレを拒絶していた。 だけど、少し乱れた息と、寄せられた眉、そして汗の浮く肩がなんとも(なまめ)かしい。 布団を手繰り寄せるゴローくんの腕に、ツーっと指を走らせると、彼はくぅ……と喉を鳴らして身をよじり、オレから顔を背けた。

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