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51-恥ずかしい部分が……見えそうで……見えない!

「ゴローくん、会ったらまずお耳ペロペロしていい?」 「いやです」 「くすぐったくしないから」 「……ちょっとだけですよ?」 「やったぁ!」 ペットを前にすると、飼い主に幼児化の魔法がかかるという噂もどうやら本当のようで、自分がどんどん阿呆になっていく自覚があるのに止められない。 赤ちゃん言葉にだけはなるまいと思っているが、どれだけ呪いに抗えるのか。 ん?魔法?呪い?どっちだ。 いや、どっちでもいい。 「ゴローくん、シッポも見せて」 「はい」 ゴローくんが携帯端末を置いて角度を調整する。 耳と同じくらい飼い主がときめかずにいられないのがシッポだ。 『耳派』『シッポ派』と人気を二分するが、結局『どっちも好き』という所に行き着いてしまうのが飼い主の(サガ)というやつだろう。 一番気分が上がるのはシッポをフルフルしてもらった時だけど、オレが興奮するのはそう……。 病気入院ではないので、画面に映るゴローくんは、普段通りのシャツにズボン。 ズボンの背後にはスリットが入っていて、そこからシッポを出している。そのスリットの上にはシッポカバーとしてポケットのようにフラップが付いていた。 携帯端末を振り返りながら、ゴローくんが腰をクイッとそらし、シッポカバーに指をかける。 「ハクトさん、見えてますか?」 体をねじりながら、ゴローくんが後ろ手にシッポカバーをペロリとめくった。 ここがオレの興奮ポイントその1だ。 突き出した尻とそらした腰がなんともセクシーで、慎ましやかに秘密の穴を覆う布を、自らめくるゴローくんはまるでオレを誘ってるようで……。 「はぁぁ……ゴローくん、今日も最高にエロ……いや、可愛いよ。振って、振って」 「んっ」 軽く力んでピロピロとシッポを振ってくれる。 興奮した時と違って、自力でシッポを動かそうとすると、なぜか上下にしか振れないらしい。 その不器用な感じもすごく可愛いのだ。 「ぁあああああ……かわいいいいいぃぃぃ!じゃ、次、脱いで見せてくれる?」 「はい」 ゴローくんが携帯端末に向き直ると、カチャカチャとベルトを外し始めた。 ここは興奮ポイントその2だ。 ファスナーを下げると、下着に覆われたふくらみがチラリと覗く。 前のめりになってゴローくんが膝までズボンを下ろし、体を起こすと、白いシャツの裾から再び慎ましい膨らみが覗く。 ああ、チラ見えの美学。 気付けばオレは、歓喜のあまりベッドをバンバンと叩いていた。 そしてゴローくんがパッと後ろを向けば、下着のストラップで持ち上げられた男らしい尻がむき出しに。 割れ目を上に辿れば慎ましいシッポがチョンと付いている。 ここからはもう全てが興奮ポイントだ。 「ハクトさん、見えてますか?」 「うんっっ!見えてるよ!シッポ振って!」 「はい」 「もうちょっとお尻突き出してくれる?」 「はい」 ああ、ゴローくんの恥ずかしいところが見えそうで見えない。 「少し足を開いて」 「こうですか?」 「う、うん!それでシッポを指で持ち上げてくれる?」 「……それは、恥ずかしいです」 「そっかぁ!恥ずかしいかぁ!」 何度も同じお願いをして、その度に断られてるけど、シッポが恥ずかしそうにお尻の谷間にピタッと張り付くのが可愛くて、ついついお願いをしてしまうのだ。 「じゃあ、今度はさっきより大きくシッポ振ってくれる?」 「はい。……んっ!はぁ……んっ、んっ!」 上下に不規則にシッポが揺れる。 ……ああ、恥ずかしい部分が……見えそうで……見えない! 「もうちょっと」 「はい。ふぅ……んっ!はぁ……んんっ!」 鼻から抜ける低い声も艶っぽい。 見えそうで……見えないのがイイ!けど、あ、見えた。 でも一瞬すぎだ! 「んっ……ハクトさん、もういいですか?シッポが……んっ……つりそうです」 「あ、ごめんね、ゴローくん、もういいよ。ありがとう」 「はい」 シッポがパタッと脱力した。 オレのお願いに応えられたことで満足げなゴローくん。 シッポを動かし疲れたせいで気だるげで、それがまたたまらなく色っぽいんだ。 いそいそとズボンを穿いたゴローくんが、携帯端末を覗き込む。 画面がクールフェイスで埋め尽くされた。 「ハクトさん、発情してますか?」 ゴローくんがキュッと首を傾げた。 「えっ、携帯端末越しなのに伝わるの!?」 「携帯端末越しだとわかりません。でも、耳とシッポを見せてとお願いされる時はいつも、発情している時と同じような顔をしています」 あ、携帯端末越しだとこっちも見られてるって意識が薄くなるから……。 「そんなだらしない顔してた?」 「…………えーっと、そばにいる時より、もうちょっとだらしないです」 うわぁ!オレ、どんだけみっともない顔さらしてたんだろ。 「でも、でも、ハクトさんはだらしない顔もカッコ良くって可愛いです」 ゴローくん、そんな気遣いまで出来るようになって……。 フツーのノンアノなら『変な顔~アハハハ~』だよ。 「ゴローくんはどんどん賢くなっていくね」 「そうですか?嬉しいです。シッポの見せ方が上手でしたか?それとも耳ですか?」 「いや、賢さを発揮してるのはそこじゃないよ」 「違いましたか……」 ゴローくんが小さく落ち込んだ。 「あ、いや、耳もシッポも見せ方がすごく上手になったね。何か工夫してるの?」 オレの質問にゴローくんのクールフェスが静かに歓喜した。 こんな楽しい通話も三十分間だけ。 時間制限をされているわけじゃないけど、研究所の医師に目安として『毎日の通話は三十分間くらいかな』と言われたゴローくんが一秒もオーバーしないようにきっちり通話を終わらせてしまうのだ。 「ゴローくん、明日会えるのを楽しみにしてるから」 「はい、僕もです」 「……おやすみ、ゴローくん。また明日」 「おやすみなさい、ハクトさん。また明日」 通話を終えた端末を無意識になでていた。 画面越しでも想いは伝わる。しかし画面では伝わらない、匂いや感触、そして温もりを早くこの腕に欲しい。 頭の中はゴローくんのことだらけ。 遠足前の子供のように高揚してしまっている。 はぁ……今夜はなかなか寝つけなさそうだ。 でもゴローくんはあっさり寝てるんだろうな。 ……まあ、そういうところも好きなんだけどね。

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