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62-ゴローくんが喜ぶだろうと思ってやってるだけ!だからね

軽い体を持ち上げ、向かい合わせに抱いて、乳首を噛んだ。 「ァアッ……チュッチュするハクトさん……可愛い……」 くしゅくしゅとオレの髪をかき混ぜ、ギューっとしがみ付いてくる。 可愛いが身動きしづらい。 一旦ゴローくんを下ろし、リードを引いてベッドまでの数歩を歩かせた。 「ゴローくん、お座り」 ちょっと首を傾げたゴローくんが、ベッドの上に正座する。 「お手」 とろけ顔で手を差し出した。 「ゴロンして」 寝転んだゴローくんがオレに腹を見せる。 「じゃあ、チンチンして」 またちょっと考え、ショートパンツから自分のモノを取り出すと、オレの顔をポヤンと見つめながらしごき始めた。 そういうつもりじゃなかったんだけど。 まさか嫌がりもせずにオナってる姿を見せてくれるなんて。 ………はぁ。 たぎる……。 ……これはあくまでゴローくんがペットっぽい扱いを望んでいるからであって、オレの趣味でも性癖でもない。 そう、ゴローくんが喜ぶだろうと思ってやってるだけ!だからね。 「ン………。ずっとイキそうだったから……もう出そうです。イっていいですか?」 「あ、待って!挿れたい」 「はい」 ゴローくんが自慰をやめ、四つん這いになって小さくシッポの揺れるお尻をオレに向けた。 あーーもう。ゴローくんが早く欲しくてたまんないって思ってるのがバシバシ伝わってくる。 色っぽくそらされた腰をなでながら、グッと押し込む。 その途端、キュッと窄まり、すぐにフワッと包み込んでくれた。 「………っっ!」 必死で射精をこらえ、背中に汗をかくゴローくんの耳にチュッと吸い付く。 「ゴローくん、イっていいよ」 「っっっ…………ァア」 中からも張っている部分をすり上げ放出を促すと、口を緩ませたゴローくんが腰を引きつらせ、甘く喉を鳴らした。 「出ま……し……た」 くにゃりと弛緩したゴローくんが事後報告のように呟いて、さらなる快感に息を乱す。 「ゴローくん、気持ちよかった?」 「はい。でも、気持ちいいより『幸せ』と『大好き』でいっぱいです」 「そっか。もっと幸せになりたい?」 クイっとリードを引くと、ゴローくんの笑顔が深まる。 いつもは嫌がる大きな耳を噛んでも甘い声を上げてギュウギュウと抱きついてきた。 「今日はゴローくんが満足するまでしてあげる」 「……僕は……もう……もう……大満足です。あとは、ハクトさんが満足するとこだけ見たいです」 「そっか。じゃあ、もう少しだけ付き合ってね?」 今日の旅行の目的はゴローくんに喜んでもらうこと。 だから調子に乗ってやりすぎちゃいけない。 ゴローくんの反応を大切に、火照る肌をくすぐるようになぞりながら、ゆっくりと絶頂を目指す。 「あ……!はぁっっ!」 ゴローくんが寝具を乱す布ずれと、艶かしい吐息。 熾火のようにジワジワと侵食する快感。 爽快な放出を求め、激しくしたくなるのを堪えて、じっくり深い快感を探った。 「あ……はぁあ……」 ゆっくりと、だけど力強くナカを擦りたて続けているうちに、ゴローくんの吐息がさらに切なげになり、オレの腰に絡みつく長い足に落ち着きがなくなった。 「ゴローくん、そろそろイクね……」 「ハクトさん……すきです……だいすきです……」 オレの言葉が聞えているのか、いないのか。 それでもオレとゴローくんほぼ同時に昇りつめ、幸福に満たされて果てることができた。 うん……やっと……。 これで告白してゴローくんを喜ばせるというオレの悲願が叶ったんだ……。 ◇ 旅行の目的はゴローくんを喜ばせること。 もちろん旅行全体としてもゴローくんに楽しんでもらえたが、ホテルでの工夫を凝らした告白とそのあとのイチャコラがメインだ。 そして、それは大成功のうちに終わった。 はずだった………。 「本来の目的を間違うなんて馬鹿すぎだろう!あははははははは!!!」 閉店後のパン屋でコクウはオレを指差し大笑いだ。 「なんかちょっとだけ違和感はあったんだ。だけどそれ以上に達成感が大きかったから……」 「オレが助言してやった部分は全て上手くいったっていうのに……ふはっ……!!!!」 ——これで告白してゴローくんを喜ばせるというオレの悲願が叶ったんだ……。 と、ご満悦だった、自分が恥ずかしい。 そして、ゴローくんを喜ばせるためにと、事前準備の工作にいそしんでいた自分に『一度、初心に立ち返って、よく考えろ!』と言ってやりたい。 「で、告白文を書いたカードはどうしたんだ?」 「ゴローくんが自分の部屋の壁に貼ってる」 いくら告白しても反応薄だと愚痴ったオレに、ゴローくんが喜びそうな方法で告白をすべきだとコクウが助言をしてくれた。 それで一緒に考えた、お手伝いゲームを使った告白。 ゴローくんは大喜びをしてくれて……。 だけど、告白文もゴローくんが喜びそうな内容の方が良いよな……と懸命に考えた結果、一番大切な部分をしくじってしまった。 オレが用意したカード。 『ハ、ク、ト、サ、ン、ダ、イ』 『スキ♡』はドミノだったので残って無い。 その上、これはオレへの愛の言葉で、ゴローくんへの告白ですらなかった。 ………だって、ゴローくんはオレに好きだって言われるより、オレに好きだって言う時の方が嬉しそうだから……!!! 「あー……もー……信じらんねー!!」 「またお手伝いゲームをやれば良いじゃないか」 「同じ手法を使うのは恥ずかしいよ」 「懲りずに馬鹿の一つ覚えの告白をして、毎度サラッとかわされ続けてた奴が何言ってるんだよ」 「…………」 「そもそも、なんでそんなに告白にこだわるのかが、やっぱりわからないんだけどな」 呆れたように笑いながら、残り物のパンを詰めた袋を渡してくれる。 「それは、だから、ゴローくんがオレの愛情を疑って不安になったとしても、告白の思い出があれば、確かに愛されていたと信じられるよすがになるだろう?」 「不安にさせなきゃいいだろうに」 「憧れてたんだよ、一生をともにしたいと思った相手ができたら、風光明媚な風景の中で記憶に残る告白をしたいなって」 「何度やったって失敗するんだから諦めろ。唯一ゴローくんの反応を引き出せたお手伝いゲームだって、風光明媚な絶景じゃなくホテルの部屋でしたんだろ?」 「窓の外に綺麗な小川が流れてて、風情があったんだよ」 フッと笑ったコクウがミニクロワッサンをオレの口に押し込んだ。 「ゴローくんは仰々しい告白なんか求めちゃいないだろ?毎日小さな愛情で満足してるんだ。それで良くないか?」 「おファ………!」 オレがしたいの! 反論はミニクロワッサンに封じられた。 「どうしても再挑戦したいなら、焦って実行するんじゃなく、もう一度ゆっくり考えて、完璧に準備してからにしろ」 「……」 「まあ、どうせ失敗するだろうけどな」 「な……ふっ!」 大きく開けた口に、再びミニクロワッサンを詰められてしまった。 「お前が考えた程度の低いプランでもゴローくんを感動させる方法が無くもない」 「……?」 ニィっと口の端を上げ、コクウがオレに顔を寄せる。 「教えて欲しいか?」 コクコクと頷くオレの頭をニヤニヤ笑いのままクシャクシャとかき混ぜた。 子供扱いにムカつくが、コクウの提案にはハズレがないため無視できない。 すがるような目を向けたオレにコクウがイラッとくるドヤ顔を返してきた。 「いいかハクト、次回告白する時にはな、最初に『これからゴローくんがとっても感動することを言うよ』と宣言するんだ。そうすればゴローくんは、感動することを言ってくれた!と感動に打ち震え、感動につぐ感動の大嵐間違いなしだ」 「は!? そんなわけ……!」 ……いや、待て。 ゴローくん……うん…………うん。 「……あるな」 でも、それで良いのか? いや、逆にそれで何か問題があるのか? 「うーん……」 余り物のパンと一緒にゴローくん用にと焼いてくれたクコの実パンを受け取り家に帰る。 「コクウが『ゴローくんに喜んで欲しくて、ゴローくんのためだけに特別に焼いたパンだよ』って伝えてくれって」 「コクウさんが僕のために……!」 ……ああ、ゴローくんが感動しまくっている。 さすがだな、コクウ……。 ◇ 告白のやり直しは、コクウの言う通り、しっかり考え、期間もあけて、いつかわからないけど必ずするつもりだ。 次回は、告白するつもりがゴローくんに告白の強要をしていたなんて事態には絶対ならない。 場所は温泉か、北国の雪原か、南国の原生林か、はたまた異国の地か。 とにかく、思い出に残る場所がいい。 特別な場所で最高の告白を成功させるために、ゴローくんとの何気ない幸せに満ちた毎日を、ずっと保ち続けていきたい。 ささやかだけど大きな野望だ。 だけど、きっと大丈夫。 未来を思うオレの頬がふうっと柔らかく上がっていった。

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