3 / 28

第3話

ブラックキャットは代々ルシファーの溜まり場のバーで、夜はバー昼間は喫茶店に変わる。 昼間の時間帯に、ルシファーのメンバー以外の客は見た事はない。ルシファーの溜まり場と知っていれば、誰もこの店に近付く者はいない。 三日後、天馬の予想は当たり、宗方太陽がブラックキャットに現れた。 その顔には、痛々しくガーゼと絆創膏で埋め尽くされていた。店にいたメンバーも目を丸くして宗方を見ている。 その顔を見て天馬は思わず吹き出した。 「ぶっ!何その顔!」 「……」 宗方は所在無さげに目を伏せている。 「で?ここに来たって事は、腹は決まった?」 天馬はソファから立ち上がると、片目の宗方の目を覗き込んだ。 「はい……」 宗方は真っ直ぐな目を天馬に向け、 「あなたについて行きます」 そう言って宗方は頭を下げた。 天馬はその言葉に面食らう。 ルシファーに入れて下さい、入りたいです、でもなく、あなたについて行きます、とこの男は言った。 自分の顔が熱くなったのを感じた。 誤魔化すようにタバコに火を付けると、 「一ちゃーん」 カウンターにいた、村上一を呼んだ。 「なんスか?」 「暫く面倒見てやって」 「ええー⁉︎オレ⁉︎」 「おまえと同い年だ。じゃ、宜しくー」 そう言って手を上げ、不満を洩らす一の言葉を無視し天馬は店を出た。 「あ、あの……!」 店を出た途端、宗方が追って来た。 「何?」 「これで、不良に絡まれなくなるんですか?」 「なるよ」 (不良……おまえもその不良になるんだけど) 天馬はその言葉を飲み込んだ。 「おまえ、バイクの免許持ってる?」 「いえ……」 「じゃあ、免許取ってきて」 「え?」 「バイクはオレのあるから、免許取ったらオレの専属の運転手に任命してあげるよ」 そう言って、ニヤリと笑い宗方の肩を叩いた。 「そうすれば……」 宗方はそう呟くと、玄龍に良く似た目を天馬に向け、 「あなたの傍にいれますか?」 そう言った。 天馬は呆然と宗方を見た。表情を変える事なく、真っ直ぐ天馬を見つめている。 「あ、ああ……そ、うだな……オレ運転苦手だから、おまえが免許取って、運転してくれると助かる……」 「わかりました」 宗方は軽く頭を下げると、再びブラックキャットに入って行った。 「なんなの……あいつ……」 まるで愛の告白を受けたような、気恥ずかし気持ちになり、天馬の頭は混乱した。 約束通り天馬は、宗方が揉めていた英信をはじめとする高校とギャングチーム、暴走族に話を付けた。 《十河工業の宗方太陽はルシファーのメンバーとなった。宗方と揉める事はルシファーを敵に回す》 各方面にそう宣言した。 一番厄介だと思った英信高だったが、現在の頭である灰原壮介はあまり関心がなかったようだった。元々、灰原は過去稀にみるやる気のない頭で、表面上同盟を組んでいるルシファーとしては頼りないところだったが、こちらとしては付き合いが楽で助かっているのも確かだった。

ともだちにシェアしよう!