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第4話

宗方太陽がルシファーに入って一週間程が経った。 その日の夕方、ブラックキャットに顔を出すと、律儀に天馬を出迎えた宗方はルシファーのライダースを羽織っていた。 身長のある宗方に良く似合っていると思った。 「そのライダースどうした?」 「オレの一枚譲ってやったんですよ」 隣にいた一が宗方の肩を叩いた言った。 「もしかして、九十九(つくも)さんのか?」 「ええ、兄貴にもらったのがあったんで、それを」 村上九十九は玄龍が頭を張っていた四代目副ヘッドであり、一の実の兄であった。 「それは、とんでもない人のもらっちまったな」 少し小首を傾け、悪戯っぽい顔を宗方に向けた。 「そうなんですか?」 「村上九十九、一の兄ちゃん。四代目副ヘッドだった人で、今もオレたちの憧れの人だ」 カウンターにいた市村も口を挟む。 天馬は宗方の前に立ち、開いていたファスナーを上げると、 「良く似合ってる。大事にしろよ」 そう言って、ポンと軽く肩を叩いた。 「はい……」 宗方は少し恥ずかしそうに目元を赤らめている。 「(かしら)……」 宗方が自分を呼ぶ。 おそらく、一にそう呼べと言われたのだろう。 天馬的には頭と呼ばれるの好きではなかったが代々ルシファーは年上の先輩をアニキと呼んだり、リーダーを頭と呼ぶ事が習わしのようになっていた。 「なんだ?」 「明日から、バイクの免許を取りに教習所通います」 「そうか、早ければ二週間くらいで取れるもんな」 「オレ、運転教えてやるよ」 一が宗方の肩に腕を回して言った。 「こいつ、中坊の時から九十九さんのバイク乗り回してよく怒られてたからな」 市村が言うと、 「良くコケて傷つけて、いつもぶっ飛ばされてたな」 思い出したように一は言うと、九十九の鉄拳を思い出したのか、肩を竦めた。 宗方は少し戸惑ったような表情をしていたが、一たちのやり取りを素直に受け入れているようで、初めて会った時よりも表情が柔らかく見えた。 「あ、あの、頭……ありがとうございました」 突然宗方が頭を下げてきた。 「何が?」 「お陰様で絡まれる事がなくなりました」 「そう、良かったじゃん」 「はい……こんなオレを拾ってくれて、ありがとうございました」 そう言って頭を下げる。 「そうねー、あのまま行ってたら、おまえ落ちるとこまで落ちてたかもなー」 天馬は薄っすらと笑みを浮かべ、下げている頭をわしゃわしゃと荒っぽく撫でた。 それから、宗方は二週間で免許を修得した。一の教えのお陰なのか、技能面は問題なかったが、筆記に苦戦したと聞いて天馬は笑った。 「オレのバイク乗ってていい」 だから、バイクを買う必要はないと、天馬は自分のゼファーを宗方に預けた。その代わり、自分の足になれ、そう言った。 宗方は相当腕っぷしが強い。 おそらく、ルシファーで一番強いと思われている一と互角だと周囲で言っていた。 一自身も、タイマンで勝負したら勝てるか分からない、と言っているほどだった。 天馬はその腕っぷしの強さと足代わりとばかりに、宗方を常に連れ立っていた。すっかり、宗方は天馬の用心棒と周知は認めているようだった。 天馬も、宗方を可愛がった。犬のように自分について歩き、忠実で少しバカな所が可愛いと思った。 そして玄龍の面影を宗方に被せている自分がいた。

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