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第7話

「オレ……一年の時、魁星学院にいたんです。バスケ部でした……」 「へえー、おまえバスケやってたの?」 宗方の高身長とガタイの良さに納得した。 魁星学院は県内で有名な私立の名門高だ。スポーツが盛んな高校で、特に野球は甲子園の、バスケ部はインターハイの常連校として有名だった。 「で?そのスポーツ少年がなんで?」 天馬はタバコに火をつけると聞いた。 「去年のインターハイ予選で、その年はライバル校の天王寺学園に負けて魁星はインターハイを逃しました。その、天王寺にその当時同じ一年で間宮っていう凄い選手がいて……同じポジションだったんで、かなり意識していました」 「同じポジションってどこ?」 天馬はバスケに詳しくはなく、尋ねてみる。 「パワーフォワードです」 「って?何するポジション?」 「ゴール下の守備と点取りです」 「ふーん……」 ピンと来るはずもなく、目を天井に向けた。 宗方が有名バスケマンガのタイトルを口にすると、 「読んだ事あります?」 と聞いた。 「うん、あるよ」 「あれで言う、主人公のポジションです」 「ああー」 赤毛の主人公が豪快にリバウンドをしている漫画を思い出す。 「それです……」 宗方は、少し照れたように目元を細め天馬を見た。 「そのインターハイ予選で直接、間宮とやり合いました。レベルが違う、そう思いました。でも、自分にとっていい目標ができたと、間宮を勝手にライバル視してました」 一度言葉を切り、苦笑いしているように天馬には見えた。 「間宮は唯一、一年で国体の県の代表に選ばれてて、しかも日本代表ジュニアの候補にも上がってました。二カ月程前、その間宮が不良に絡まれている所に出くわしてしまって……」 「で、助けた?」 宗方はコクリと力なく頷いた。 「無意識に……間宮に怪我なんてさせられないってそう思ったら、体が勝手に動いてました」 宗方は、その間宮が怪我をすれば国体代表も全日本ジュニアの候補の話もなくなる。下手するとバスケの活動にも影響を受ける、自分に勝ったライバルがそんな事でバスケ人生を台無しにする事が許せなかったのかもしれない。 「間宮を逃して、三人相手に喧嘩して……一人が意識失って病院送りになりました」 その先は読めた。そこから警察に話しがいってしまったのだろう。 「その事が学校にバレて、魁星のバスケ部は試合の出場停止を余儀なくされて、オレは……魁星を辞めました」 悔しそうに宗方は目を瞑り、軽く頭を振った。 「結局、その喧嘩相手からお礼参りされて、そこから毎日のように不良に絡まれるようになって……」 おそらく宗方の噂を聞きつけた輩が面白がって、宗方に喧嘩を挑んでいたのだろう。 「おまえ……恨んでないの?その不良どもを」 「……恨んでいないと言えば、嘘になります。でも、感情を抑えきれなかった自分も悪いと思います」 「わかってる?ルシファーもその不良たちと同じだぞ?」 宗方はジッと組んでいる大きな手を見つめている。 「ルシファーは……オレが見てきた不良とは少し違う気がします」 根本的な所は同じだ、そう言いたかったが言葉が出なかった。 「バスケはもうしないのか?」 「はい……自分はスポーツする資格、ありませんから」 そう少し悲しそうな顔を天馬に向けた。 天馬はそっと宗方の頭に手を置いた。軽く撫でるとその手を頬に添えた。宗方はその手を取ると愛おしそうに天馬の手に頬摺りをし、天馬は思わず宗方の腕を引き寄せ胸に抱いた。宗方はされるがまま大人しく天馬の胸に収まる。 「バスケ……また、やりたくなったら言えよ?」 「はい……」 天馬は宗方の大きな背中を撫でると、宗方も天馬の背中に腕を回した。

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